旬彩もろきち

料理研究家や料理人、料理を愛する人のために、食の魅力や食文化の知識を発信します。また、飲食店経営のための経営学的知識や、ワンランク上の料理をするための科学的知識もあわせて紹介します。

Kindle出版完了です!

お久しぶりですmorokitchです。 

ペルーに行ったっきりで投稿できませんでしたが、ほんの少し落ち着いたので生存報告です(笑)山あり谷ありでペルーから何とか帰国し、日本でお世話になった皆さんに報告会でお礼、大学院を卒業してすぐ東京に引っ越してリモートで研修を受けるといった生活を送っておりました。

さて、ブログ更新が遅くなっていた言い訳なのですが、ペルー料理旅の成果をkindle出版しようと現在準備中です!下書き途中の段階で13万字をこえており、ちょっと絞り込みが必要ですが…。→★2020年10月に完成しました★

KINDLE UNLIMITEDにご登録の方は無料にてご覧いただけます↓

なので、ペルーで体験したことは、出版を終えてから少しずつ記事にしていきたいと思っています。かといって、ずっとはてなブログ手付かずなのもなんだかなぁと思い、今回は帰国後の出来事を投稿することとしました。

 

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突然ですが、私には旅の師匠がおります。加えて文才もある方で在学中からお世話になっておりました。帰国してから「kindleに出版します!」と伝えると、フレンドファンディング用に作ったレポートのレビューをしてくださいました。

というわけで今日はその時に話した内容を少しだけ紹介したいと思います。「料理要素はつけなあかんで」という読者様のためにちょっとしたペルーな創作料理も紹介します。

 

 

まずは「どうやったらディープなスポットを知ることができますか?」と師匠に聞いた時の答えです。 

今や本一冊でプライスレスな体験ができる時代

旅行先を決める時にブログや雑誌を読みますよね。私は凝り性だったのでそれに加えて、アマゾンプライムで「ペルー」と検索して手当たり次第に読み放題したり、文化人類学者の本を読んだりしました。

さて、これまでは普通のこと。旅先のディープな情報を本気で仕入れたいなら「本の著者にコンタクトをとりましょう」と教えて頂きました。確かに、必ず本には著者経歴が書かれていますし、Kindleでは著者のブログやインスタアカウントまで書かれています。直接本人と話せれば文字に起こせない現地のリアルなニュアンスや、書ききれなかった細かい情報にたっぷり出会えます。

 
「いや、そんな厚かましくしちゃっていいの?」と思いますよね?いいんです。私自身ペルー料理修行の学びをKindleに出版する際は、コンタクトOKと明記します。「お問い合わせはこちらに」とメールアドレスを書いてある本もありました。まぁ人によるでしょうから、ダメなら断られる。それだけです。

そういえば、私自身やっていました。ペルー料理本が国内には一冊しかありません。ミシュランのビブグルマンに載る満席の有名店でランチを食べてから「夕方30分だけでいいので話を聞かせてください!」と頼み込みました。それでOK頂けたのですから、大抵の大忙しの人も会ってくれるんじゃないかと思います。言わずもがな彼からは目からウロコな情報をたくさん頂きました。

Kindleなら数百円、ハードカバーでも数千円で極上の知識が手に入ります。もしかするとこれからは本は欲しい情報の入り口に過ぎず、巻末のプロフィールから先が真の情報収集になるのかもしれません。

 

次は師匠に「ペルーの食材もすごいけど日本の食材も負けていないなと思いました」と感想を言った後の話。


食の究極形態はローカルフードかもしれない

 
世界屈指の食の豊かさを誇るペルーから帰ってきて「よく見たら日本にもたくさん魅力的な食材があるな」と気づいたのが今日この頃。じゃがいもを産地ごとに使い分けるペルー人のこだわりに感動したのは記憶に新しいですが、日本にも張り合える食材がたくさんあります。例えば、葉生姜やエディブルフラワー入りのベビーリーフを取り扱う駅前東急ストアの「農家直送野菜コーナー」は大のお気に入りになりました。

この際、ちょっとわき道に逸れて、最近作った料理も紹介しましょう。

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これは、スイートポイントというニュージーランドの甘ーいパプリカの肉詰め。目に入ってすぐ「アヒアマリージョみたいなんあるやん!」と飛びつきました。家に帰って生のままかじると驚きの甘さ…思わずそのまま半分食べてしまいました(はらぺこあおむしもびっくり)。

アヒパンカとニンニクと一味唐辛子を加えてミンチと少しの豆腐を入れてよく炒め、最後にオーブントースターで10分ほど焼き上げました。あしらいはかわいい多肉のアイスプラントです。

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続いてこちらは料理用バナナのトーストサンド。モチーフはアレキパのホームステイ先で作り方を教わったロコトアレキペーニャです。これまたアヒパンカベースのアデレソを作ってパンに塗り、間に揚げ焼きにして塩を振ったバナナを挟みました。

てっぺんに卵黄入りのメレンゲを乗せて180°のオーブンレンジで15分弱。仕上げにアニスを振りかけました。

いやはや東京って何でも手に入っちゃいますね。最近はエシャロットを狙っていて「おつとめ品」になるのを今か今かと待ちわびております(ちょっと高い)。

 

そろそろ本題に戻りますね。日本の食材はすごいって話の続きです。

定量的にはA5和牛や糖度、定性的には一本釣りやカボスぶりなど、味の評価基準が多いですよね。しかし、師匠からするとこれはまだまだ表面的。そんな優れた食材たちの悲しい一面にメスを入れます。

「でも、魚沼産こしひかりってたくさんの農家の米を混ぜて売っているんですよ。淡路島の牛乳なんかもそうで、色んな牧場でとれたミルクが混ぜて売られててーー」

…はて、私お気に入りの牛乳は北海道牛乳ですが、一体自分はどこの乳牛の味に惚れたんでしょうか?

ピンポイントで生産地に足を運んで初めて、産地ブランドを支えるメインプレイヤーの実力を知れます。多分北海道の牧場で飲む牛乳はスーパーのあれより何倍も美味しいはずです。さて、ここからが重要な疑問。

 
「何故こんなに美味しいんですか?」

 

例えば、北海道のカウボーイは答えます

「うちでは沖縄のサンゴを使って土づくりをしてるからね。牧草の質がちがうんですよ」

じゃがいも農家さんならこう言うでしょう

「いや、巷では新じゃがが美味しいって騒いでるけど、収穫後に半年寝かせた方がデンプンが糖化して甘く美味しくなるんだよ」

 

師匠は曰く、本当に美味しい食材の扱い方は生産者が知っているとのこと。
産地というスケールでは個々の農家の良さがごちゃ混ぜになりどうしても平板化してしまいます。本当に食材の良さを知っているのは、何年もその食材を愛おしく育てて食べてきた生産者です。

生産者は経験的に培った美味しさを持っています。SNSが発達して個人が活躍できるようになったこの時代。食材を産地でなく農家の〇〇さんという単位で選べるようになると、ずっと素敵な食ライフが送れそうな気がします。

 

最後はちょっとした雑談より。

コロナに見る「部分解」の罠

 

「STAY AT HOME」「家から出ないで」こんな非日常が日常になり始めてきましたが皆さんいかがお過ごしでしょうか。感染者が一月前までほとんどいなかったペルーでは爆発的に感染拡大し、日本の感染者数の1.5倍にまで達してしまったそうです。日本では「一世帯に2枚マスクを配ります」ペルーでは「男は月水金、女は火木土しか外に出てはならない」などなど他者多様な対策が打ち立てられています。

さて、

「なんでこんなに対応が違うの?」

というのが自然な疑問でしょう。その原因が部分解にあります。他者への感染防止に固執しすぎた日本はマスクという自分から他者への拡散は防げるものの防御力の低い装備に辿り着きました。ペルーでは家族での集団行動を抑えて街に出る人の絶対量を減らすことはできましたが、単身者には不自由極まりない生活を強いてしまっています。

個別に見てもそうだし、もっと大きく見てみましょう。世界全体として家から出ないことを大前提としていますが、ストレス過多になり身心に不調をきたしている人が増え、収入がなくなり生活すらままならない人も出てきました。医学的観点からウイルスと戦うことに固執して運動科学や精神医学、経済学は二の次にされてしまったからでしょう。議論は際限なくできそうですが、ここで一つ知見が得られましたね。次のことが言えるでしょう。

 
「一つの立場から全体最適は作れない」


今日初めにお話した「本の著者に会いに行こう!」にしても本質を突き詰めると、文字を拾い読みする自分と、文字より大事な体験をもつ著者との立場の交わりが重要な点です。

「本にちょこっと書いてた話ってそんなに大事だったの!?」

と何度思ったことかわかりません。最近、コンサルの新人研修も始まったんですが、ロジカルシンキングって1000ページの本があっても書けないのでは…と思っています。ビジネス本を読んで知ったつもりになっていましたが、その著者レベルの人たちにコテンパンにされております。

つまり、人が交わることで情報の意味合いは爆発的に成長するのです。どれだけ眼光紙背に徹そうとも、読めない情報を人は持っています。

しかし、コロナ対策会議に精神科医やアルバイトで生計を立てる人はいたでしょうか?多分、似たり寄ったりな経歴の人や医療関係者が多かったはず。

 


こんなことを考えながら、どうやったら最高に美味しい料理が作れるのかな、と思いを馳せるのです。「日本はある程度、ペルーもそこそこ、カレーは独学で少しやったけど足りるんだろうか…」

ここまでくると中国やトルコ、お金を頑張って稼いでヨーロッパにも行ってみたくなります。もっと色んな料理人にも会ってみたいし知識のある人と話したい、なんて。

師匠とコロナ論を交えながら、他人を鏡にして自分を見つめ直すきっかけをゲットしました。

 

 お知らせ

  レビューを受けた内容を踏まえてこれからKindleでの出版に向けた準備も進めていきます。サクッと読めるダイジェスト版とじっくり読める文庫本兼写真集の2冊に分けて出版しようと思っていますが、もしかしたら間を取ったような一冊の本にするかも。

仕事と並行できるかは謎ですが頑張って行きたいと思います!

また、ブログの更新は京都にいる間に下書きのまま放置していた記事とか、時数の関係でKindle出版に載せきれなかった文章を面白く編集して投稿出来たらなと思っています。更新頻度は落ちるかもしれませんが長い目で見守っていただけますと幸いです!