旬彩もろきち

料理研究家や料理人、料理を愛する人のために、食の魅力や食文化の知識を発信します。また、飲食店経営のための経営学的知識や、ワンランク上の料理をするための科学的知識もあわせて紹介します。

ロサンゼルス国際空港近辺の食

こんにちは、morokitchです。とうとうペルー料理旅を開始いたしました!この記事では日本からトランジット先であるロサンゼルスまでの事を書いています(旅先でのメモのため常態で書いています)。

フレンドファンディングに協力していただいた方へのリターンは、3/3-3/20までの日記を加筆修正し図や写真を追加したもの、そして、料理マッピング(後日紹介)を100枚(予定)を合わせてお送りしようと考えています。どうぞお楽しみに。

 

3/3 6:00〜8:00(日本時間)

出国の朝は早く起きて京都市中央市場へ原付を走らせた。ペルーのメルカド(市場)を見る前に日本のそれの感覚も覚えておかねばならない。広い敷地には段ボールや発泡スチロールが敷き詰められ、そこら中でリフトが走り回っていた。

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スーパーで売っているような手頃な雑魚がいればと思ったが、やはり卸売なだけあって立派な魚しか売っていない。雰囲気は、売りに対して活気があるというよりも魚の下処理に真摯に向き合う職人の姿がむしろ静的だった。


魚を捌くのは諦めて新鮮な白魚を買った。帰宅して国産レモンと岩城屋の醤油を使ってトマトサラダとセビーチェにした。さらばJAPAN。包丁も研いで関西国際空港へ向かう。

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3/3 14:00〜17:15(日本時間)


関西空港国際線のチェックインカウンターは広々としていた。一瞬フロアを間違えたかと思うほどに人が少なく、キャンセルされている便もいくつかあった。ライブや演奏会とは違い、コロナウイルスに対する警戒が目に見えて実感される。

幸いロサンゼルス経由リマ行きの便は運行されるらしい。チェックイン・手荷物検査・入国審査いずれも並ぶことなく30分足らずで全ての手続きが終わった。チェックインでひなあられを貰い、そういえば今日は桃の節句だったなぁと思い出す。


持て余した時間は、タイラーコーエンの「エコノミストの昼ごはん」の読書に充てることにした。

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良いレストランを見つけるために内部相互補助に注目する方法がある。例えば、カジノの中華が美味いこととカジノに中国人客が増えることには正の相関がある。カジノで儲けるために多少採算が厳しくなろうとも、質の高い料理で顧客を引きつけようという経営戦略である。


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とすると、今朝足を運んだ京都中央市場に併設の寿司屋(10:30開店)は値段相応以上に美味しいに違いない。今朝も市場内に一般客はいたし、卸とはいえその8割型は小売に対応する習慣もある。実際に中央市場が一般客を増やすためのバーベキューや食の祭典などのイベントに手を打っていることもその裏付けとなろう。ペルーでもそういう場所を見つけて足を運びたい。


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※ただし、内部相互補助は料理の原価率が高くなる場合にしか良い店(料理)を探し出すことはできない。例えば、映画館のポップコーンは薄利な映画上映費用を回収するための料理である。スタバの甘いドリンクも上質なコーヒーを淹れるための役割を担っている。また、酒を飲むならアテの価格の高いBAR、料理を食べるなら飲み物の価格の高いレストラン。すなわち、今回の料理旅では、優れた内装や景色が売りのレストランで食事をする事はないだろう。


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トランジット先のロサンゼルスへ向かう搭乗口に着いた時点では、同じように早く着きすぎた日本人が5.6人ほどいた。搭乗1時間前になると欧米人たちも現れ、最終的に130人ほどが集まり国際線らしい雰囲気になってきた。


9時間30分のフライトではスープストック東京の機内食がでできた。写真に書いたように、総じてクオリティは高かった。


そしてロサンゼルスに到着。視界に入るすべての人が映画の役者に見える。現地時間にして12時を過ぎたので昼食をとることにした。

空港から北へ1.5キロほど歩くとIN-N-OUT BURGERという観光客に有名なハンバーガーショップがある。その前には小さな芝生があり、思い思いに座って昼食をとる人や昼寝をする人がいた。なんとも自由。日本だとまず外で寝転がる人なんていないなぁ。


そこを通過して更に歩いたところにメキシコ料理の店があったのでそこで食事をすることにした。

いわゆるテクスメクスで、サルサとトルティーヤを組み合わせたアメリカ料理。空港近くで車の通りが多いゆえ、賃料もそれなりなのだろう。使う食材は缶詰からでできたような印象で、使われるサルサやアヒソースも既製品に見えた。不味いとまではいかないが、外食産業の資本関係を感じさせられる買い物。チップ込みで$13だった(チキンのクミンをもっと効かせて、メキシカンライスの炊き上げに使う水をもう少し減らすと美味しくなりそう)。

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さらに北へ歩くとスーパーマーケットがあった。来たぞ食品コーナー!入り口は生花が並べられた香り高いフローラルな雰囲気で、手前から葉物野菜、果物、根菜類、奥に加工食品や生活用品が並び、陳列は日本のそれと同じような仕方である。

赤や黄色のビーツに加え、サツマイモのような色をした赤いじゃがいも。日本では手に入れにくいフレッシュのハーブが所狭しと並んでいる。

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驚いたのは葉物野菜がびしゃびしゃなこと。じっくり見ていると棚の上からシャーっと水がスプレーされてきた。野菜的にこれは嬉しいのだろうか?少なくとも水が滴る野菜たちは新鮮に見えた。


果物コーナーは特に面白く、スターフルーツパッションフルーツ白ココナッツアーティチョークに加え、刺々しいキワノメロンや、たらこ唇のような形のチャヨーテスクワッシュに初めて出会えた。

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加工食品コーナーにはサルサソースやキムチ、味噌、豆腐のような海外の食材まで並んでいるし、乾燥食品コーナーのスパイスの種類には目を見張るものがある。今にでもこれらを買い占めてキッチンへ駆け込みたい衝動に駆られた。


戦時中に大活躍した缶詰は今でもなおアメリカ人の食卓に届いているらしい。先程のメキシコ料理屋で食べたブラックビーンズやコーンも安く売られていた。それでもやはり物価は高め。トルティーヤサラダの原価計算をしたらファストフード店にも関わらず、低く見積もっても50%程度になった。なるほど、ホールスタッフの生活を支えるチップという文化が発達するわけだ。


こんなにも食材に恵まれているにも関わらずアメリカ料理が育たなかった理由はなんなのだろうか?

例えば、テレビと子供中心の生活が挙げられよう。

前者によりテレビを見ながら食べられるような食品が求められたり、温めたり混ぜたりするだけの時短料理が主婦層に広まった。後者によって酒やつまみが育つことなく、子供を中心に意識したファミリー食が広まった。これらの結果として、見た目を意識しない菓子や朝食(目はテレビの方を向いている)や、ケーキやアイス、ピザといった子供が喜ぶ食事が大いに普及した。

今日足を運んだ二軒のスーパーマーケットでもバケツ一杯のアイスが$7以下で売られていたり、日本のホールケーキの2倍以上の高さのケーキが$11で売られたりしていた(トルティーヤサラダの5倍のカロリーはあろう)。


もちろんこれらの下支えとして、世界随一のスピードで発達した生産技術、通信技術、流通システムがあるのは言うまでもない。

「最先端を行く」というのは常に潜在的な問題を看過してしまうリスクをはらんでいる。


帰り道は歩き疲れたのでマンゴースムージーを$7で買ってIN-N-OUT BURGERの前の芝生で飲むことにした。街路の灌木や観葉植物を見ると多肉種が多いのに気づく。

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ロサンゼルスらしい暖かな日差しとカラッと乾いた空気の賜物であろう。人によって選抜された栽培種の多くが、ぼってりした果皮を持つのも頷ける。

芝生に座ると想像以上に柔らかく、ここまで肉厚なのかと驚かされた。寝転がると少し冷たくなってきた風も避けられて心地が良い。リマ行きの便まであと5時間。残りの時間はスペイン語(結局全然話せない)の勉強と読書に充てることにしよう。