旬彩もろきち

料理研究家や料理人、料理を愛する人のために、食の魅力や食文化の知識を発信します。また、飲食店経営のための経営学的知識や、ワンランク上の料理をするための科学的知識もあわせて紹介します。

初心者がお祭り屋台の収益を最大化するために知っておくべき経営のコツ


こんばんは、morokitchです。

本来であれば、お祭りに出店を出店する予定だったのですが、雨天により先方から出店中止のお知らせが届きました。

といってもドタキャンではなく、数日前から「雨が降るとお客さんの入りが少ないから、折角出店していただいても売れ行きが悪くて苦情が出たりするんですよ」と連絡をいただいた上での思いやりありきの中止です。

 

私は27,000円かけて宮崎の業者から焼き鳥650本を、30,000円強で機材レンタルを注文していたのですが、ぎりぎりのところでキャンセル。何とか赤字を抱えずに済みました。

天気予報をこんなにありがたいと思ったのは初めてですね(´;ω;`)ウッ

 

本来なら、実際営業をしてから収益などを公開したかったのですが、それはかなわなかったので、去年度の売り上げ情報をもとに作成した販売計画と、収益を最大化するための原理を紹介することにしました。

お祭りや学園祭の出店を考えている方に加え、飲食店経営者の方のためになればと思います!

 

 

どんな店が儲かるか?

出店を考えている初心者が最初に直面する課題がこれになるでしょう。

身内を招いてのパーティーならまだしも、複数人でやる場合人件費もかかりますし、何万円も出資して大赤字となってはやってられません。

よくある誤解や、本当に考えるべきことを小項目でまとめていきます。

 

原価率に関する誤解

web上では「祭りの出店はぼったくってぼろもうけしている!」などとたたかれてますが、大抵そういう記事では原価率を引き合いにしています。

原価率とは、売値に対して材料費がどれくらいかかってるかを指す指標で、レストランでは30%くらいが妥当だといわれています。

 

まず、焼きそばで例を見てみましょう。

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焼きそばの販売計画例

 

自分で作れば180円相当でできるものを400円で売っているということですね。

他にも計算して表にしてみました。

 

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屋台メニューごとの原価比較表

 ポップコーンや綿あめのように、原材料が乾燥トウモロコシだけ、砂糖だけというものは原価率が非常に低くなります。

さらに、売値を高くすればもっと原価率は下げることができます。

 

しかし、気を付けなければならないことがあります。回転率です。

 

例えば、綿あめ機材を10,000円でレンタルしたとします。

綿あめを1本作るのにかかる時間は約90秒で、清算も含めて一人あたりに接客で2分かかるとしましょう。作り置きはできませんから、お客さんが来るのを見計らってひとつづつ作ることになります。

17:00~20:00までの間、大繁盛して売れ続けたとしても売上本数は90本。価格にして27,000円です。当然そんな夢物語みたいな綿あめ屋さんはありませんから、半数で見積もってせいぜい13,500円の売り上げがいいところでしょう。

こうして考えると、3時間以上働いて利益は3,500円。時給1000円ちょいだからぼろもうけしているとは言えません。

(出店に際して場所代がかかるなら赤字になることもあり得ます)

 

つまり、「原価率が低いからぼったくりでぼろもうけしているんだ!」

ということはなく、普通に出店をやるための『必要経費』に対応するのが綿あめ1個300円なのです。

 

実際、綿あめの出店で儲けを出しているのは、自前の綿あめ機材(高性能で30~40秒程度で綿あめができる)を持ったプロの方です。相当綿あめに思い入れがない限り、初心者が手を出すようなものではなさそうです。

 

私の焼き鳥屋の場合

私は、バイトとして友達のN君を雇って、以下のような内容で焼き鳥屋をする予定でした。

 

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焼き鳥屋の販売計画

どうですか?

日当8,000円の人件費と場所代10,000円を差し引いても利益が25,000円上がります。

 

(本当は朝に自分で串打ちしてもっと美味しくし原価を下げることもできたのですが、先方から「衛生面が心配なので」と断られてしまいました 。これでも調理師なんだけど、主宰の指示には従わざるを得ません…泣)

 

ともかく、このように利益を生めるのには理由があります。

読者の皆さんはお気づきでしょうか?

 

剰余価値のコントロールによる利益確保

今回のポイントは『生産量を増やすこと』にあります。

よく見ると料理人は私だけなのに、網焼き機を2台レンタルしています。

 

当初の計画では

「網焼き機一台で10分で20本焼けるから、3時間で最大350本ほど売れそうだ」

と考えたのですが、試算してみるとそれだと、利益が5000円ほど。

これならN君のように雇われて8000円もらった方がマシです…。

 

幸い人がたくさん来る見込みでしたから、まだまだ売ることは可能そう。

そこで考えたのが生産量の倍増です。

 

始めの章で記載した通り、お祭りの出店は平均的には『必要経費』を回収できる程度の売り上げしか見込めません。つまり、当初の計画では

 機材代+材料代+人件費(N君とmorokitch)+場所代 = 総売上 

という式になっています。

 

言い換えると、お客さんは焼き鳥を買うことで「レンタル機材の価値・材料の価値・場所の価値・morokitchとN君の労働力の価値」を購入しているわけです。

 

では利益(morokitchのおこづかい)はどうすれば生まれるのでしょうか?

その答えが『剰余価値』です。

 

人件費を固定して、販売量を増やすと、労働者は同じ給料でたくさん働かなくてはいけなくなります。その結果、お客さん目線から見た見かけの「労働力の価値」はそのままに、全体から見た「労働力の費用」は小さくできます。

分かりやすく明示すると次の式のようになります。

 

機材代+材料代+人件費(↓)+場所代 = 総売上 +利益(↑)

 

 

要は、馬車馬のように働けば、労働にかかる費用が希釈され、それだけ多くの利益が生み出せるということです。

ブラックですが、これが資本社会の本質だったりします。

 

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N君は会計やmorokitchの補助でてんやわんや、私自身も汗をぬぐう間もなく焼き鳥を焼き続けることになったでしょう(笑)

 

魅力的な商品を売る必要性

もちろんこの方法は、作った分だけ商品が売れる見込みがあるときにしか使えません。

当然ながら、お客さんが少ない暇な祭りではせいぜい派遣バイト程度の利益しか期待できないのです。

 

しかし、他店からお客さんを奪えるくらいの魅力的な商品を作ればどうでしょうか?

ケチって業務スーパーで買った野菜で冷やしキュウリを売るよりも、少し値が張る京野菜を使って「京の旬菜 冷やし胡瓜」と銘打った方がお客さんも興味を持ってくれるのではないでしょうか。

 

当然、売値は上げなければなりません。

 業務スーパー:原価50円・売値300円・粗利250円

なら

 京野菜:原価100円・売値350円・粗利250円

くらいが妥当です。

 

この例からもお察しのように、原料の価値が変わっても(本当にぼったくりしない限り)利益は変わらないのです。

あくまで、売り手と買い手で価値を等価交換する関係は崩れません。

 

ではどうすればいいのかというと、数を捌く。これに尽きます。

 

冷やしキュウリ売れば売るほど、労働者の価値(接客や商品の補充)は希釈されて、結局手元に利益が残るという仕組みです。

 

まとめ

お祭り屋台で収益を上げる方法はお判りいただけたでしょうか。

原価率にとらわれることなく、売れる見込みがある商品を、バリバリ働いて売りまくればよいのです。

 

間違っても、ぼったくりはしないでくださいね。

「高すぎるからあんなの買わないよ」とお客さんが離れる原因になりますし、購入後に、こんなクオリティで500円もするのか?ふざけるな!」とトラブルになりかねません。

 

何をとっても言えることですが、楽して稼げるオイシイ仕事なんて滅多にお目にかかれません。人一倍働いてやっとそれなりの利益を作れるのです。

 

お金が欲しいなら、この(ブラックな)システムに乗って、バリバリ働きましょう。

逆に、楽しめればそれでいいなら、お客さんと正当な価値交換をしながら、仲間と楽しく非日常の商売をやってみてください!

 

暇になった私はN君とカラオケにでも行って楽しむことにします~🎤

あぁ、ほかでバイト探さなきゃなぁ。。。