旬彩もろきち

料理研究家や料理人、料理を愛する人のために、食の魅力や食文化の知識を発信します。また、飲食店経営のための経営学的知識や、ワンランク上の料理をするための科学的知識もあわせて紹介します。

時短炊き込みご飯アロスコンチレ(arroz con chile)のレシピ

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アロス・コン〜シリーズ最終回は真っ赤な辛いペルー風ピラフ「アロスコンチレ」です!

チレ(Chile)は食材ではなく辛いという意味の形容(名)詞で、特に唐辛子による辛さに対して使われる言葉です。なのでアロスコンチレを直訳するなら「ご飯と辛味」といったところでしょうか。

 

ロスコンチレは、炒めた唐辛子ペーストを炊き込んだ辛〜いご飯と海老の旨味がベストマッチな料理。なんとなく四川風エビチリを彷彿とさせるような味わいです。

というのも、海老の旨味成分イノシン酸と唐辛子の旨味成分グルタミン酸が相乗効果を発揮して強い旨みを感じさせるからでしょう。

前回投稿した「アロスコンマリスコス(ターメリックで炊いたご飯と海鮮)」「アロスコンチャンチョ(コリアンダーで炊いたご飯と豚肉)」と合わせると炊き込みご飯シリーズ3品目になります。


つまりこの時点で、赤・緑・黄の三色のご飯と海鮮(貝、魚、イカ)・豚肉・海老の3種の組み合わせ(3×3=9種)ができるようになったわけです。

ロスコンポジョのような鶏肉を使った炊き込みご飯もありますが、アロスコンチャンチョと殆ど作り方が同じなので、実質3×4=12種のペルー料理が作れるようになったことになります。同様に、使える具材のレパートリーを増やしていけばいくらでも作れそうですね。

 

以前大阪のペルー料理店『ロスインカス』さんで食べた時はハバネロを使っていたのですが、今回はロコトペーストとアヒリモを使って辛味を弱めに作ってみました。

今回は冷やご飯を使って簡単に作れるようにアレンジしてあるので、思い立った時にパパッと作ることができます。

※ちょっと蛇足ですが、ペルー料理は家庭料理から派生しました。それ故に、出回っているレシピの至る所に時短技が散りばめられています。今回紹介する冷やご飯を使う炊き込みご飯の作り方は、回転率の高いレストランでもよく用いられる手法なので、胸を張って時短術を使っていきましょう!

 

ロスコンチレのレシピ

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材料3~4人分

冷やご飯:2合

鶏がらスープ:300mL

玉ねぎ:1/2個

ニンニク:1片

じゃがいも:2個

しめじ:1/3パック

ミックスベジタブル:50g

ロコトペースト:大さじ2

アヒパンカペースト:小さじ1

海老:16尾

アヒリモ:1個

 

レシピ

  1. フライパンに油を敷き、海老を入れて炒める。表面が焼き固まったら取り出す
  2. 同じフライパンでみじん切りにしたニンニクと玉ねぎ、ロコトペースト、アヒパンカペーストをよく炒める
  3. ※省略可:強火にしてピスコを加えてフランベする。
  4. 鶏がらスープを入れて鍋の旨味をこそげとり、さいの目切りにしたじゃがいもとしめじ、ミックスベジタブルを入れて煮込む
  5. 煮詰まって出汁が少なくなったらご飯を入れてよく混ぜて完成。お好みで横向きにスライスしたアヒリモを添えて完成

 

ペルーでは頻繁に辛い料理×じゃがいもの関係が見られます。じゃがいもの淡泊な味が唐辛子の辛さを緩和してくれる効果があるからです。今回もその作法に則ってレシピを考案しました。なお、遊び心でしめじも入れていますが、役割的にはじゃがいもと同じです。本場風にしたいならマッシュルームあたりが妥当でしょう。

また、フランベをすると炎の火力(1500℃前後)のおかげで素材の香りが引き立ちます。炎が上がるのが怖い、という人は生のロコトを直火で炙ってから使えばOK。その後に、工程2の段階で小さじ1のピスコ(なければ料理酒)と共に炒めればだいたい同じような風味になります。

 

ここまでで、生米から炊く・炊飯器で炊く・炊いたご飯を混ぜるという三通りの炊き込みご飯の作り方を紹介しました。それぞれでご飯の食感・味の染み込み具合が異なります。どれが正解などはないので、一番好きな方法をお試しください。

また、すべての記事に目を通してくださった方は、煮崩れを防ぐ(食材を途中で取り出す)・表面に焦げ目をつけてから煮る(リソレというフレンチの技法)・フランベをするなどといった工夫が散りばめられていることにも気づかれたことでしょう。

もちろん、めんどくさければどれもやらなくてOKです。なんなら今回の料理は

  1. 鍋にカット済みの全ての材料を入れてスープで煮る
  2. 煮詰まったところでご飯を入れて混ぜる

の2工程だけで完成します。

わざわざ炒めてみたり加熱時間を変えたりしているのはどれも「素材の個性」を生かすための工夫です。あまりに均一な料理は食べていて楽しくありません。例えば、焼き魚・きのこの炊き込みご飯・お味噌汁これらを全てミキサーで混ぜてしまえば、いとも簡単に「10秒メシ」ができてしまいます。こんなウィダみたいな料理よりは、食感が違うとか、味の濃さが違うとか、香りが違うとか…口に入れてみるワクワクが多いに越したことはありません。今回、アロスコンチレを作った方はきっと、海老をかじるときにワクワクしたはずです。そういう「料理の不均一性」が食を楽しませるための一番の工夫だったりします。

ちょっとお堅い話になってしまいました。まぁ、あんまりこじらせると「卵かけご飯をしっかり混ぜる派とざっくり混ぜる派でケンカが起こる」なんてことにもなりかねないので、好みやその日の気分に合わせてたのしくゆるりと料理を楽しんでください!笑

 

※ペルー料理に使う食材やその入手法はこちらから確認できます

morokitch.hatenablog.com