日本カレーの歴史とアヒデガジーナ(Aji de gallina):レシピ付き食文化講義3
こんばんは、morokitchです。今回は「アヒデガジーナ」のレシピを紹介しつつ、カレーから食文化を考えてみます。
日本のカレーの歴史
皆さんは不意にカレーが食べたくなることはありませんか?初期欲を刺激するスパイシーな香りととろっとした深いコクのある味が、少し思い出すだけでほしくなってしまいますよね。日本のみならずイギリスやペルーでもそれぞれの土地に根付いたカレーが愛されており、老若男女問わず絶大な人気を誇っています。どうやらカレーには我々人類を魅了する魔力があるようです…。
ところで、日本にあるカレーはイギリスから流入したものです。本来のカレーはインドが発祥で、とろみは全くなく、シャバシャバとしたスープのような料理でした。16世紀にイギリスが東インド会社を設立したのをきっかけに次第にインドの食文化がイギリスに流入するようになったと考えられえており、18世紀後半になってやっとイギリスにカレーが伝わったそうです。
カレーのスパイシーな香りはイギリス人たちをすっかり虜にしてしまったようで、挙句の果てにはイギリス海軍の水兵たちも「船の上でカレーを食べたい」と言い始めたそう。しかし、船の上は波の揺れが大きく、このままではシャバシャバで熱々のカレーをこぼさないように気を付けながら食べなければなりません。これでは折角の食事の時間が落ち着けないということで、小麦粉によってとろみをつけてこぼれにくくしたといわれています。
日本に伝わったのはいわば「イギリス水軍式カレー」であり、それを日本の食材で作れるようにアレンジしたものが「日本のカレー」の始まりです。当時は肉食が解禁されていなかったので、肉の代わりに鯛や海老、カエル等の肉を『イギリスのカレー粉』で煮て、仕上げに小麦粉を加えることが明記されています。
参考)明治5年に出版された『西洋料理指南』という本からレシピの抜粋(一部書き換えて読みやすくしています)
「カレー」の製法は葱一茎、生姜半個、蒜(にんにく)少しばかりを細末(みじん切り)にし、牛酪(バター)大さじ一を以て煎り、水一合五尺(270cc)を加え、鶏、海老、鯛、牡蠣、赤蛙等のものを入れてよく煮、後に、「カレーの粉」小さじ一を入れ煮る。西洋一字間(たぶん一時間したらということ)、已に熟したるとき(煮詰まってきたら)、塩を加え、また、小麦粉大さじ二を水に溶きて入れるべし
※さらに料理人目線から補足。スパイスは油で炒めて香りを引き立てて使うのが定石ですから、カレー粉を炒めずに直接湯に入れてしまうのはスパイスの何たるかがわかっていないことを示しています。ネイボッブと呼ばれるインドでお金を稼いで帰国したイギリス人(成金インドかぶれ)たちが、形式的にしかインド料理を模倣できていなかったことがうかがえます。
そういえば、じゃがいもが入っていませんよね。じゃがいもはペルー発祥で、ヨーロッパには16世紀後半、日本には1600年ごろに輸入されました。
ごつごつした見た目と淡泊な味が輸入先の食文化になじまなかったようで、ヨーロッパはでは「悪魔の根っこ」なんていうあだ名をつけられたそう。それもあってか、16世紀に持ち込まれたにもかかわらず、一般に浸透するまで2世紀ほども時間を要したといわれています(長くなるので詳述しませんが、じゃがいもは栄養価が高く栽培が容易であり、貧困層を救う食材となりえます。それに気づいた有識者によって西洋に広められ、偏見を克服したといわれています)。
日本でも、じゃがいもはなかなか料理に登場せず、カレーの具材に加わったのは、イギリス海軍のカレーレシピが伝わってから26年も後の明治31年頃でした。なお、明治36年には文明開化によって肉やカレー粉も大衆向けに販売されるようになりました。そのころになってようやく「現代の日本のカレー」が確立されたようです。
アヒデガジーナのレシピ
さてさて、一方で、ペルーのカレーはどうでしょうか?
歴史的側面に目を向ける前に、アヒデガジーナの作り方を見てみましょう。
材料4皿分
鶏むね肉:1枚
玉ねぎ :1/2個
食パン:1.5枚
牛乳:500mL
アヒアマリージョペースト:大さじ2
アヒパンカペースト:小さじ1
ターメリック:小さじ1
パルメザンチーズ:大さじ1
ご飯:2合
ふかしたじゃがいも:2個分
レシピ
- 鍋に水を800mLと鶏むね肉を入れて、煮汁が半分以下になるまで茹でる
- 鶏肉を取り出し、手で細かく裂く(包丁でそぎ切りにした後に叩いても良い)
- フライパンにオリーブオイルを敷き、みじん切りにした玉ねぎとアヒアマリージョペースト、アヒパンカペースト、ターメリックを炒める
- フライパンの中身をミキサーに移し、食パンと牛乳を加えて混ぜる
- 鍋にミキサーの中身と鶏むね肉を移してパルメザンチーズを加えて温め、塩で味を調える
- 皿にご飯を盛り、ふかし芋を並べた上にアヒデガジーナを盛り付けて完成
今回の写真には、トッピングとしてウズラの茹で卵、オリーブ、アヒアマリージョを使っており、アヒアマリージョは直火で炙ることで香り高く仕立てています。ピリッとすまろやかな口当たりで、日本人の口にも合う味わいです。ピーカンナッツを加えることもあるのですが、手に入らない場合はクルミやカシューナッツでもよいでしょう。
美味しく作るコツは何といっても鶏肉から上手に出汁を取ること。中途半端に茹でたくらいではおいしくできないので、20~30分くらい時間をかけてむね肉をじっくり煮込みましょう。家庭によってはセロリを入れて出汁を取るところもあるようです。
ペルーのカレーの歴史
レシピにあるように、アヒデガジーナは出汁やスパイスも使いこなしており、もちろん現地の唐辛子も効果的に組み合わせています。そして、特筆すべきは小麦粉よりも付加価値の高いパンを使ってとろみをつけていることでしょう。当時の「生活水準」が西洋よりも低かったペルーで、どうして「カレー水準」が西洋よりも高いという逆転現象が起きているのでしょうか?ペルーの主食はじゃがいもと米だったはずですが、パンはどこから来たのでしょうか?
その答えが、第一章で言及した16世紀のヨーロッパへのじゃがいもが流入にあります。1532年、スペインのコンキスタドール(征服者)であるピサロという人物がペルーで栄華を極めていたインカ帝国を陥落させて植民地化に成功しました。金銀や香辛料の獲得が目的であった彼らは、ペルーの多種多様な植物を自国へ持ち帰り、その中にじゃがいもも入っていたのです。
パンがペルーに浸透したのもこれと時期を一にします。というのも、征服後にはスペイン人がペルーに居座ることになります。彼らの主食はパンですから、やはりペルーにいてもパンが食べたくなるものです。そこで、現地のペルー人たちにかまどを作らせて、創意工夫を凝らしたパンを焼かせ、食べていたのです。今となってはペルーではいつでも焼き立ての美味しいパンが食べられていますが、あくまで主食はジャガイモや米。アヒデガジーナが作られ始めた当時は、わざわざカレーにとろみをつけるために小麦を製粉しようとは思わなかったでしょう。小麦粉はパンの前駆体でしかなく、とろみをつけるのに最も適した食材が、時間がたって固くなったパンだったのだろうと想像がつきます。
つまり、ペルーは唐辛子やじゃがいも等の食材をスペイン経由で西洋に送り、逆に、そこからパン作りの文化を受け取ったという形になります。
この交換が完了した時点で、ペルー・スペイン、少し遅れて日本に同じ食材がそろったことになりますから「ご飯にかけて食べられる一番おいしいルゥ」を求めて試行錯誤した時に全く同じカレーにたどり着いても何ら不思議ではありませんよね。それでも、ペルーと日本ではこんなにもカレーの様式が異なっているのですから、食文化の差とは強力なものです(今やイギリスと日本ですらカレーの様式に差があります)。
まとめ
日本は、西洋からカレー粉と肉を、ペルーからジャガイモを仕入れることで現在のカレーを獲得しました。一方で、ペルーは西洋からパンを仕入れて現地の肉や香辛料と合わせてアヒデガジーナを作りました。
「ご飯にかけて食べるルゥ」というコンセプトはほぼ同じなのに、我々の目からみるとアヒデガジーナは特殊な料理に見えてしまいます。同じ食材が手に入った時点から今にかけてで日本カレーとペルーカレーがここまで異なる料理に成長したのは、間違いなくその時点までに築き上げられてきた食文化観の差といえるでしょう。
ここからどのような発想が得られるでしょうか。
例えば、閉鎖的な環境で料理修行してきたフランス人・中国人・日本人のシェフを一人ずつ招いて文章だけで書かれたカレーのレシピを渡せば、似通ってはいれども三者三様の料理が出来上がることが予想されます。これは、それぞれの食文化観(いわば伝統)が異なっているから生じる差であり、カレーの異なる進化の様相を微分した結果に等しいでしょう。
つまり、よく「どこそこのフレンチがよかった」とか「最近食べた中華料理が」などと話をすることがあります。全部とは言えませんが、その料理屋で使われている食材は日本で手に入るものばかりです。つまり、私たちが「フレンチ」や「中華」として認識しているものは、用いる食材の差ではなく、結局のところ、料理の際の「料理人のちょっとした意識や認識(=美味しいの判断基準)の差」でしかないのかもしれません。
こう考えると、逆のことも言えそうです。
例えば、あなたはアヒデガジーナのレシピや味を知ってしまったので、今あるカレーをもっと美味しくする工夫をできるようになりました。これは、あなたの食文化観が「生粋の日本人」のそれから遠く離れていっていることを意味します。また、あなたが生まれてからマクドナルドのバーガーや餃子の王将の天津飯、或いは、コンビニの中華まんを「美味しい」と感じた瞬間にも、あなたの食文化観はじりじりと太平洋や日本海の外側に向かってシフトしているのです。
さらに、あなたの「美味しいの判断基準」が変わるのは小さな変化かもしれませんが、同様にたくさんの日本人が外国料理を美味しいと感じかねない環境で生きています。今この瞬間にもたくさんの日本人の子供がマクドナルドのハンバーガーの美味しさに感動しているのです。
「この刺身醤油、ごま油を入れたら美味しくなるかも」なんていう発想を少しでもしたことがありますか?日本の食文化観(=美味しいの判断基準)は、どこかに「和」を秘めていながらも、すっかりグローバル化しているかもしれません。
あれ?となると、あと何百年もすれば世界中の食文化観が収束して新しい料理が生まれなくなってしまうんでしょうか?いったいその時に作られる料理はどんなものなのでしょうか?
それともそんなことは起こりえないのでしょうか?では食文化観の収束を妨げてくれるのは何なのでしょうか?国家間の貧富の差でしょうか…?
※読んでいただきありがとうございました。記事中で紹介したアヒデガジーナの調理に使うペルー食材についてはこちらの記事をご参照ください
大阪で味わう超本格ペルー料理『ソルーナ』
こんにちは、morokitchです。
先日、大阪に本格ペルー料理店を発掘したので報告いたします!
大阪市平野区に店を構える『ソルーナ』は、google mapなどでは「ラテン系多国籍料理」 とジャンル分けされていますが、世界の美食ペルー料理がメイン。
店頭ではもこもこのあいつが出迎えてくれます🦙
店内は席数20人くらいの個人営業の店。食の都アレキパ出身の店主と沖縄出身の奥様が温かく迎えてくださいました。
ひときわ目を惹いたのがこちらの楽器。サンポーニャというペルーの民族楽器です。大中小いろいろな大きさがあり、あんまり興味津々にみていたので、店主が手空きの時間に演奏してくださいました。
尺八を思わせるような透き通った音に、ヴィブラートが染み入ります。コンドルは飛んでいくからアンパンマンのマーチまで手広くやっていて、最近はサザンオールスターズの曲を練習中なんだとか(笑)月に2回演奏会もやっているらしく、なんとも賑やか。
ではでは、料理の方に移ります。
シェフいわく、美味い料理の神髄は『Simple is Best』たくさん混ぜ物をすればするほど味がぶれやすくなり、お客さんにもわかってもらえない。もともと家庭料理から発達したペルーの味を、いつも変わらずダイレクトに味あわせるのがここの流儀なのでしょう。
今回頂いたのは、チチャロンとポヨ・アルマニーとお持ち帰りのタマレスです。
まずはチチャロン。
この店の看板商品で、驚くほどに肉が柔らかく、絶妙な塩加減…!
それもそのはず、ここでは沖縄料理のラフテーの調理法を応用して異例の『外はカリっと中はトロっと』を実現しているそう。 日本人はもちろん、ここに食べに来たペルー人も「こんなに美味しいチチャロンは初めてだ」と満足そうに食べるとのこと。
「うちは本格的なペルー料理しか出さないんです」と言いながら、ちゃっかり本格の上にも行く店主の腕に脱帽です。
続いてポヨ・アルマニー。
唐辛子ソースを使った鶏肉のピーナッツ煮込みです。
「甘いの?辛いの?いいえどちらでもありません」という感じの、日本人からすると新感覚な料理です。唐辛子は辛味というよりは旨味調味料として使われており、 料理の輪郭を形作っています。そこからふわっと香るピーナッツの甘い香りがなんともいえぬ安心感をもたらしてくれます。
ご飯と一緒に盛られてたじゃがいもは「素茹で」です。ご飯とポヨ・アルマニー、じゃがいもとポヨ・アルマニーという風に、主食の食感を変えることで異なる味わいを楽しめます。
そう考えると、カレーライスだって、じゃがいもは別個に茹でて食べても良いのではなかろうかと思いました。
最後はタマレス。
こちらは持ち帰りにして自宅で頂きました。
チョクロというジャイアントコーンをすりつぶした生地にオリーブや豚肉を挟み、バナナの皮で包んで蒸しあげた料理です。
ほくほくとほろほろの中間くらいの舌触りで、ピリッと感じるスパイスが良いアクセントになっています。タマレスは自分でも作ったことがあるのですが、スパイスの調味が難しく、かなり苦労しました。「この味が本場だ」と知れたのは個人的に大きな収穫でした!
この他にも、セビーチェ(要予約)やアロスコンマリスコス、ロモサルタード、アヒデガジーナのような定番メニューから、スダートデペスカドやピカロネスのような踏み込んだメニューまで幅広く取り揃えています。
加えて、パパ・セカやレンズマメ、カンチータ、アヒアマリージョなどの物販もしているので、料理人には非常に嬉しいですね。これから料理教室もはじめようとしているらしく、受講生に買い占められる前にお急ぎください(笑)
都心からは少し離れていますが、ここを目当てで来る価値のある味でした。
グルメ必食のソルーナの料理。ぜひお試しください!
肉じゃがは和食ではない?和食の定義とは:食文化講義2
母の味の代名詞ともいえる肉じゃが。
和食の神髄である出汁をベースに、じゃがいも、人参、豚肉や牛肉、きぬさや。家庭によってはこんにゃくを入れたりニンニクやショウガで味を引き締めたりと、非常に多様性に富んだ国民的料理です。
しかし、少し歴史を振り返ると、肉じゃがを「和食」として扱うことに疑念が生じます。今日は、肉じゃがを題材として和食が何かを再確認し、これからの和食がいかなる運命を歩みうるか、その可能性について議論したいと思います。
和食の4つの特徴について
2013年の12月、和食がユネスコ無形文化遺産に登録されました。
その際に和食の4つの特徴が提示されました。
- 多様で新鮮な食材とその持ち味の尊重
- 健康的な食生活を支える栄養バランス
- 自然の美しさや季節の移ろいの表現
- 正月などの年中行事との密接な関わり
農林水産省が公表しているページで詳細を見ると、日本で育まれた食文化の各要素が相まって「無形文化遺産としての和食」を構成しているということがわかります。
http://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/ich/
この中で今回注目したい特徴は、料理の構成に言及している2つ目です。『2.健康的な食生活を支える栄養バランス』の項目の説明には下記の文言が記されています。
『一汁三菜を基本とする日本の食事スタイルは理想的な栄養バランスと言われています。また、「うま味」を上手に使うことによって動物性油脂の少ない食生活を実現しており、日本人の長寿や肥満防止に役立っています』
なぜ「和食は健康的」といえるのか?
これには科学的解釈を加える必要があります。
まず、ヒトは塩味に敏感に反応します。全く塩を使わずに作った煮物を想像してみてください。きっと「味が薄い」とか「美味しくない」と感じるはずです。
煮物に限らず、醤油をつけない刺身、素焼きの椎茸、タレをかけない納豆、茹でただけの豚肉…どれも同じように何か物足りないと感じるはずです。
逆に、塩だけなめても「美味しい!」とは感じませんよね。
つまり、ヒトが物を食べて美味しいと感じる条件には「塩味+油脂」または「塩味+旨味」、或いは、「塩味+旨味+油脂」という構図が必要なのです。言い換えると、ヒトは塩味・油脂・旨味の相乗効果に敏感に反応し、それらを好んで食べる習性があるのです。
無形文化遺産の2つ目の特徴では、日本人は「塩味+旨味」のパターンを使った料理が得意だと主張しており、それが長寿の秘訣だというです。
現代科学では「油脂や旨味は塩味の感覚を増長する」ことが明らかにされています。
例えば、濃い塩水と薄い塩水の2つがあったとして、薄い方にだけ旨味を加えると濃い塩水と同じくらい塩辛く(美味しく)感じるようになるということです。油脂に関しても同じことが言え、塩と小麦と水で作った団子に、油脂を加えるとより塩辛く(美味しく)感じます。
要するに、油脂や旨味には「減塩効果」があるのです。
また、現代科学は、油脂を過度に摂りすぎると、肥満や高血圧のリスクが高まる
ことまで明らかにしてしまいました。この飽食の時代、減塩するにしても油脂を多用するのは良くなさそうです。
ここで、世界の料理傾向を大雑把に分類してみましょう。
- イタリア料理:「塩味+油脂(オリーブ油)」
- アフリカ料理:「塩味+旨味(肉)+油脂(肉)」
- 中華料理:「塩味+旨味(肉)+油脂(肉、揚げ油)」
- 日本料理:「塩味+旨味(昆布、カツオ)」
こうして比べると、日本料理(和食)は油脂の使用感が低く、健康的に見えますね。
※ほかに減塩効果のある成分としてハーブの香味もあります。その観点からすると、洋食も健康食になりうるという主張はもっともだと思います。
肉じゃがは和食ではないかもしれない?
ところで、肉じゃがはどうでしょうか?
油脂の少ない魚ではなく牛肉や豚肉を使っているため、ほかの和食ほど健康的であるとは言えないかもしれません。それに加え、鮮度が重要な食材は使っていませんし、じゃがいもも人参も肉も季節を問わず年中出回っています。加えて、正月や七夕などの年中行事とも関係ありませんから、肉じゃがは「無形文化遺産としての和食」に含まれる4つの特徴をどれひとつ満たしていません。
肉じゃがを和食の舞台から引きずり降ろそうとする理由はこれだけにとどまりません。
そもそも、じゃがいもは南米が原産の食材で、日本に流入したのは1600年ごろです。しかも、その淡泊すぎる味は「素材の味を生かす」和食の調理法とは相いれず、なかなか民衆に広まらなかったといわれています。
その後、文明開化や戦争を経て、日本に「肉食文化」と「イギリス海軍式のカレー」が伝わります。この異国の料理であるカレーを食べた日本人が「旨味の強い肉と一緒に食べればじゃがいももイケるじゃないか」と気づいたわけです。
「昆布出汁ベースの減塩料理の技法」という下地があれど、「肉とじゃがいもを合わせる」という知恵を得ない限り、肉じゃがは誕生しなかったのです。
つまり、「肉」も「じゃが」もそれらを合わせる「肉じゃが」も日本古来からの風土によって育まれた食ではありません。
和食とは一体何なのか
このような「肉じゃがは和食ではない」という態度の行きつく先は
「肉じゃがは広義的な和食(日本の食文化)であるもののユネスコで認定されるような狭義的な和食(日本に古くから伝わる食文化)ではない」となるでしょう。
しかし、これはおかしな話です。出汁巻き卵を作るための油も輸入品ですし、突き詰めれば米すら朝鮮からの輸入品です。外国由来の文化を否定してしまうと、もはや和食は成立しません。よって、和食そのものに広義や狭義という概念を当てはめるのはナンセンスに思えます。
これまで肉じゃがが和食ではない可能性を示唆してきましたが、肉とじゃがいもを昆布出汁で煮込む国が日本以外にない以上、肉じゃがを和食と分類しないわけにはいきません。たいへんな回り道をしましたが「肉じゃがは和食である」が結論です。
では、このような結論を導いた裏側の本質は何でしょう。
私はこれを「伝統の進化」であると考えます。
『食の課外授業』などを執筆された言語学者兼文化人類学者の西江雅之先生は、伝統という言葉を、我々が目の前の文化の価値判断をする基準として定義されています。
すなわち、伝統は守ったり固執したりするための過去のものではなくて、これから新しいものを受け入れたり作ったりするためのよりどころであるという、むしろ未来に向けた言葉だというのです。
この立場から考えると、肉じゃがは、日本の出汁の技術を下地として生まれた新しい和食だといえます。
この本質を知ることで和食料理人が覚悟しなければならないのは、これからの和食の伝統の進化です。和食の伝統による審査をパスした肉じゃがは、我々の家庭料理として深くその根を下ろし、今度はこれから新しく出現する和食を審査する側へと回ってしまいました。
ゆえに和食調理人は、守ってきた出汁や包丁技術と食文化をもって、これからますます海外から流入してくるであろう食材たちを「和の伝統」の中に落とし込む必要があるかもしれません。
そのような状況に直面した際に、前と後ろのどちらに伝統を見るかという二派にわかれゆくのは自明でしょう。
あくまで、今回の記事の内容は一個人の意見でしかありませんし、伝統の捉え方に正解はありません。
しかし、この記事で紹介できた内容が少しでも、読者の思考の糧になれば幸いです。
ぽってりかわいいペルー料理『ロコト・レジェーノ(Rocoto relleno)』
こんにちは、morokitchです!今日は、ロコトを使った料理を紹介します。
ずんぐりむっくりした見た目が可愛らしいですが、その正体は泣く子も辛くて泣けなくなるほどの激辛唐辛子。
どれくらい辛いかという議論ではよく「スコヴィル値」という数値が使われます。
ピーマンは0、タバスコは1200~1800、鷹の爪は4~5万、もっというと、市場で最強の催涙スプレーが18万くらいです。どうですか?イメージできましたか?
それに対してロコトのスコヴィル値はなんと5~30万!
うーん、なんか数値やばいし辛そう!笑
まず、5~30万って幅広すぎますよね。これは、測定の精度が低すぎるのではなく、場所や熟成度によって辛さが変わるのです。
普通の唐辛子は、緑から黄色を経て赤まで熟し、次第に辛さを増していくことが知られているのですが、それに対してロコトは黄色い時期が一番辛いとのこと。また、同じ個体を見てみても、部位によって辛さが違います。最も辛味が弱いのは外皮で、次に辛いのが種を支える白いワタの部分。そして最も辛いのが種です。
しかもその種が特徴的。写真を見てみましょう。
真っ赤で肉厚な果皮に潜む禍々しくも黒い種…。
唐辛子の種子はたいてい白か茶色で、黒いのは非常に珍しいそう。これを始めに食べてみようと思った人はきっとアンデス山脈の勇者だったのでしょう…。
それで火を噴いてなお食べるために試行錯誤したのですから、我々の先祖の食への執着には畏敬すら感じます。
では、そんなアンデスの勇者と伝道者たちが遺してくれた、かわいいロコトの攻略法を紹介します。
ロコトの下処理
そのままではとても食べられないので、辛さを抜きます。
- ロコトのヘタ部分を取り、ナイフを入れてワタを切り落として種を取り出す
- スプーンでワタがついていた部分をしごき落とす
- 鍋に1Lの水、砂糖を大さじ2、ロコトを加え火にかける
- 3~10分茹で、冷水にさらす
どうもペルーでは砂糖を加えるのが一般的なのですが、それが辛味に及ぼす影響は科学的に謎(はっきり言うと関係ない)。山本紀夫先生の著書『トウガラシの世界史』にもロコトの辛味抜きに関して言及がありましたが、そこでも「意味があるのか…?」という趣旨を述べていました。
なので、合理的に料理したい方は砂糖は入れなくてOKです。
湯で時間が3~10分としたのは好みの辛さに調節するためです。長時間茹でるほど辛味とピーマンっぽい青臭さが弱くなります。それでも辛いという方は10分茹でた後にお湯を捨て、再び水から茹でてやりましょう。
逆に「もっと辛いのがいい!」という方は、生でもOK。辛い物大好き大国ペルーでは、セビーチェに入れたりする人もいるそうですよ。
※しょうもない補足:ゆで汁味見してみたらものすごい辛くて笑いました
ではつづいてレシピの紹介です
ロコトレジェーノ(Rocoto relleno)のレシピ
材料2個分
ロコト:2個
ジャガイモ:2個
モッツァレラチーズ:1個
牛肉:50g
玉ねぎ:1/4
ニンニク:1片
醤油:小さじ2
酒:大さじ1
パンカペッパーペースト:大さじ2
茹で卵:1個
生卵:1個
牛乳:100mL
オリーブオイル:大さじ1
レシピ
- ロコトをヘタごと下処理し、一緒に卵とジャガイモを茹でておく
- フライパンに油(分量外)を敷き、細かく刻んだ牛肉を炒め、次いで、みじん切りにした玉ねぎとニンニク、パンカペッパーペーストもよく炒める
- 酒を入れて鍋肌の旨味をこそげ、仕上げに醤油と刻んだ茹で卵を入れて混ぜる
- ロコトに具を詰め、モッツァレラチーズをのせ、ヘタでふたをする
- ジャガイモスライスとモッツァレラチーズを交互に重ねてつまようじで固定する
- 卵と牛乳とオリーブオイルを混ぜて塩を一つまみ加えて混ぜる
- 4と5を耐熱皿に入れ、上から6をたっぷりかけて余熱なし200℃のオーブンで20分焼く
辛味を茹でこぼしてもやっぱり辛いものは辛いので、ジャガイモやチーズ、牛乳のようなまろやかな食材と掛け合わせるのが一般的です。ジャガイモベースのドゥフィノワーズ・グラタンを添えることが多いのですが、このレシピでは簡単のためそれにジャガイモタワーを作りました(味の構成はグラタンと同じです)。
また、チーズはモッツァレラチーズを用いましたが、南米風フレッシュチーズやカッテージチーズでもOK。オーブンがない場合は(全て火入れは済んでいるので)トースターを使っても構いません。
焦げ目をつけてかっこよくしたい場合はバーナーで炙るかオーブンに入れる時間を長くしてください(モッツァレラチーズ溶けによってヘタが落ちやすいので注意)
冒険心をくすぐるロコトレジェーノ。ぜひお試しください!
ロコトの購入(楽天市場)は下記のページのロコトの項からできます。
ちょっと宣伝
今日はこのブログにインスタ連携機能があることを知って、早速使ってみました。
こんな調子で料理投稿してるのでよかったら見に来てください~~
初心者がお祭り屋台の収益を最大化するために知っておくべき経営のコツ
こんばんは、morokitchです。
本来であれば、お祭りに出店を出店する予定だったのですが、雨天により先方から出店中止のお知らせが届きました。
といってもドタキャンではなく、数日前から「雨が降るとお客さんの入りが少ないから、折角出店していただいても売れ行きが悪くて苦情が出たりするんですよ」と連絡をいただいた上での思いやりありきの中止です。
私は27,000円かけて宮崎の業者から焼き鳥650本を、30,000円強で機材レンタルを注文していたのですが、ぎりぎりのところでキャンセル。何とか赤字を抱えずに済みました。
天気予報をこんなにありがたいと思ったのは初めてですね(´;ω;`)ウッ
本来なら、実際営業をしてから収益などを公開したかったのですが、それはかなわなかったので、去年度の売り上げ情報をもとに作成した販売計画と、収益を最大化するための原理を紹介することにしました。
お祭りや学園祭の出店を考えている方に加え、飲食店経営者の方のためになればと思います!
どんな店が儲かるか?
出店を考えている初心者が最初に直面する課題がこれになるでしょう。
身内を招いてのパーティーならまだしも、複数人でやる場合人件費もかかりますし、何万円も出資して大赤字となってはやってられません。
よくある誤解や、本当に考えるべきことを小項目でまとめていきます。
原価率に関する誤解
web上では「祭りの出店はぼったくってぼろもうけしている!」などとたたかれてますが、大抵そういう記事では原価率を引き合いにしています。
原価率とは、売値に対して材料費がどれくらいかかってるかを指す指標で、レストランでは30%くらいが妥当だといわれています。
まず、焼きそばで例を見てみましょう。
自分で作れば180円相当でできるものを400円で売っているということですね。
他にも計算して表にしてみました。
ポップコーンや綿あめのように、原材料が乾燥トウモロコシだけ、砂糖だけというものは原価率が非常に低くなります。
さらに、売値を高くすればもっと原価率は下げることができます。
しかし、気を付けなければならないことがあります。回転率です。
例えば、綿あめ機材を10,000円でレンタルしたとします。
綿あめを1本作るのにかかる時間は約90秒で、清算も含めて一人あたりに接客で2分かかるとしましょう。作り置きはできませんから、お客さんが来るのを見計らってひとつづつ作ることになります。
17:00~20:00までの間、大繁盛して売れ続けたとしても売上本数は90本。価格にして27,000円です。当然そんな夢物語みたいな綿あめ屋さんはありませんから、半数で見積もってせいぜい13,500円の売り上げがいいところでしょう。
こうして考えると、3時間以上働いて利益は3,500円。時給1000円ちょいだからぼろもうけしているとは言えません。
(出店に際して場所代がかかるなら赤字になることもあり得ます)
つまり、「原価率が低いからぼったくりでぼろもうけしているんだ!」
ということはなく、普通に出店をやるための『必要経費』に対応するのが綿あめ1個300円なのです。
実際、綿あめの出店で儲けを出しているのは、自前の綿あめ機材(高性能で30~40秒程度で綿あめができる)を持ったプロの方です。相当綿あめに思い入れがない限り、初心者が手を出すようなものではなさそうです。
私の焼き鳥屋の場合
私は、バイトとして友達のN君を雇って、以下のような内容で焼き鳥屋をする予定でした。
どうですか?
日当8,000円の人件費と場所代10,000円を差し引いても利益が25,000円上がります。
(本当は朝に自分で串打ちしてもっと美味しくし原価を下げることもできたのですが、先方から「衛生面が心配なので」と断られてしまいました 。これでも調理師なんだけど、主宰の指示には従わざるを得ません…泣)
ともかく、このように利益を生めるのには理由があります。
読者の皆さんはお気づきでしょうか?
剰余価値のコントロールによる利益確保
今回のポイントは『生産量を増やすこと』にあります。
よく見ると料理人は私だけなのに、網焼き機を2台レンタルしています。
当初の計画では
「網焼き機一台で10分で20本焼けるから、3時間で最大350本ほど売れそうだ」
と考えたのですが、試算してみるとそれだと、利益が5000円ほど。
これならN君のように雇われて8000円もらった方がマシです…。
幸い人がたくさん来る見込みでしたから、まだまだ売ることは可能そう。
そこで考えたのが生産量の倍増です。
始めの章で記載した通り、お祭りの出店は平均的には『必要経費』を回収できる程度の売り上げしか見込めません。つまり、当初の計画では
機材代+材料代+人件費(N君とmorokitch)+場所代 = 総売上
という式になっています。
言い換えると、お客さんは焼き鳥を買うことで「レンタル機材の価値・材料の価値・場所の価値・morokitchとN君の労働力の価値」を購入しているわけです。
では利益(morokitchのおこづかい)はどうすれば生まれるのでしょうか?
その答えが『剰余価値』です。
人件費を固定して、販売量を増やすと、労働者は同じ給料でたくさん働かなくてはいけなくなります。その結果、お客さん目線から見た見かけの「労働力の価値」はそのままに、全体から見た「労働力の費用」は小さくできます。
分かりやすく明示すると次の式のようになります。
機材代+材料代+人件費(↓)+場所代 = 総売上 +利益(↑)
要は、馬車馬のように働けば、労働にかかる費用が希釈され、それだけ多くの利益が生み出せるということです。
ブラックですが、これが資本社会の本質だったりします。
N君は会計やmorokitchの補助でてんやわんや、私自身も汗をぬぐう間もなく焼き鳥を焼き続けることになったでしょう(笑)
魅力的な商品を売る必要性
もちろんこの方法は、作った分だけ商品が売れる見込みがあるときにしか使えません。
当然ながら、お客さんが少ない暇な祭りではせいぜい派遣バイト程度の利益しか期待できないのです。
しかし、他店からお客さんを奪えるくらいの魅力的な商品を作ればどうでしょうか?
ケチって業務スーパーで買った野菜で冷やしキュウリを売るよりも、少し値が張る京野菜を使って「京の旬菜 冷やし胡瓜」と銘打った方がお客さんも興味を持ってくれるのではないでしょうか。
当然、売値は上げなければなりません。
業務スーパー:原価50円・売値300円・粗利250円
なら
京野菜:原価100円・売値350円・粗利250円
くらいが妥当です。
この例からもお察しのように、原料の価値が変わっても(本当にぼったくりしない限り)利益は変わらないのです。
あくまで、売り手と買い手で価値を等価交換する関係は崩れません。
ではどうすればいいのかというと、数を捌く。これに尽きます。
冷やしキュウリ売れば売るほど、労働者の価値(接客や商品の補充)は希釈されて、結局手元に利益が残るという仕組みです。
まとめ
お祭り屋台で収益を上げる方法はお判りいただけたでしょうか。
原価率にとらわれることなく、売れる見込みがある商品を、バリバリ働いて売りまくればよいのです。
間違っても、ぼったくりはしないでくださいね。
「高すぎるからあんなの買わないよ」とお客さんが離れる原因になりますし、購入後に、こんなクオリティで500円もするのか?ふざけるな!」とトラブルになりかねません。
何をとっても言えることですが、楽して稼げるオイシイ仕事なんて滅多にお目にかかれません。人一倍働いてやっとそれなりの利益を作れるのです。
お金が欲しいなら、この(ブラックな)システムに乗って、バリバリ働きましょう。
逆に、楽しめればそれでいいなら、お客さんと正当な価値交換をしながら、仲間と楽しく非日常の商売をやってみてください!
暇になった私はN君とカラオケにでも行って楽しむことにします~🎤
あぁ、ほかでバイト探さなきゃなぁ。。。
チューニョとは?アンデスの昔ながらの料理方法とアレンジレシピ
昨日、大阪のペルー料理店『ロス・インカス』で晩御飯をいただき、会計後に店長と一緒にタブレットを見ながら「こんな料理があるんですね~」と、チューニョの使い方を教わりました。
店長は、次第に故郷のペルーが懐かしくなったのか、レストランで出されるような料理のみならず、「おばあちゃんが作ってくれたチューニョの料理」や「家庭料理」まで教えてくれました。この記憶が新しいうちに作らねば…!
ということで、今回は、チューニョを使ったペルー料理の作り方やを紹介します。
アンデスの知恵:チューニョの作り方
「というかチューニョって何?」
チューニョそのものの性質を知っていなければ美味しい料理は作れません。
まずは見た目から確認しましょう。
チューニョはいわば乾燥ポテトで、石のようにゴロゴロした保存食品です。
匂いを嗅いでみると、干し椎茸や切り干し大根のような独特なひなた臭さがあります。
チューニョの特筆すべき点はその作り方。なんと、凍結乾燥でつくられるのです。
チューニョは赤道付近の標高3000m以上のアンデスの高地で作られます。
そこは、夜はすごく冷え込んで外のものが凍ってしまう氷点下になる一方、昼間はからっと晴れてぽかぽかするという特殊な気候です。
そんな環境にイモを放っておけば、夜に凍り、昼に溶け、また夜に凍り…
というプロセスを何度も繰り返し、内部の水分が組織を破ってぶよぶよになります。
これを脱水して干したもの。それがチューニョです。
ジャガイモは水分が多く保存に不向きと言われますが、このように凍結乾燥してやればなんと数年間は保つというから驚き。
こういった保存食が、インカ帝国の繁栄を支えたのでしょう。
そう考えるとチューニョ独特のひなたくささにも、歴史を感じますね。
※チューニョの作り方は、非常に深~い科学と関連しているので別に記事を書きます。
チューニョの料理方法
チューニョは干し椎茸と全く一緒で、一晩水に浸けてから料理に使います。
豆のように吸水して大きくなったりはせず、そのサイズのままぶよぶよになりますが、大きいものだと中央部分が固いままだったりします。そういう場合は、小さく切ってから水に浸けるか、長時間茹でるかしましょう。
ではレシピを紹介します!
ラワデチューニョ(Lawa de chuño)
材料4人分
牛肉:200g
トウモロコシ:1本
人参:1/3本
ジャガイモ:1個
玉ねぎ:1/4個
ミックスビーンズ:50g
チューニョ:4個
コリアンダー:1把
オレガノ:小さじ1/2
コンソメスープ:700mL
レシピ
チューニョは高地の食材ということもあり、一般家庭では胃に優しく消化に良いスープにして食べられます。これはその中でも最も有名な料理です。
チューニョを叩き潰すことで細胞壁が破れてでんぷんが流出し、加熱時をすることで片栗粉を入れた時のようなとろみがつくようになります。
店長の思い出の味:おばあちゃんの料理
レシピ
店長が子供の頃に、おばあちゃんによく作ってもらっていたという料理。これが大好きだったそうな。
全く同じように作って食べてみたものの、あまりに素朴で、正直なところ「これがおいしいの?」と感じました。私がチューニョの匂いになれてなかったからか、チーズが南米風フレッシュチーズに劣っていたのか…?
いずれにせよ、いろいろな食材にありふれた贅沢生活の出来る日本でウケる味ではありません。これは「欲求としての食」ではなく「必要としての食」。
30年近く前のペルーとなると、そうそう贅沢はできなかったはずです。そんな中、店長のおばあちゃんがせっせと調理して食べさせてくれたのでしょう。きっと、おばあちゃんの愛情という最高の隠し味が入っていたはずです。
同じ山岳系のペルーにもその調理法が料理と共に伝わっています。
アレンジ:簡単南米風マーボー豆腐
材料3~4人前
豆腐:450g
牛ひき肉:300g
長ネギ:1本
鶏ガラスープ:400mL
チューニョ:2個
パンカペッパーペースト:大さじ2
醤油:大さじ1
砂糖:小さじ2
山椒:小さじ1
レシピ
- 豆腐を切って500mLの湯で茹でる
- 豆腐を取り出して置き、そのゆで汁に鶏がらスープの素と細かく刻んだあとに軽くつぶしたチューニョを加え、10分間茹でる
- 別の鍋に油を大さじ3程度しき、ミンチとみじん切りにした長ネギをよく炒め、パンカペッパー、山椒を入れて一様になるまで混ぜる
- スープをチューニョごと入れて鍋肌の旨味をこそげ取る
- 醤油と砂糖を入れて調味(仕上げに花椒や一味を入れても良い)
マーボー豆腐を本格的に作ろうとすると、豆板醤、甜面醤、豆鼓(大豆を丸ごと発酵させたもの)、ラー油、紹興酒、カイエンペッパーなど、たくさんの食材が必要になります。構成要素は旨味(豆板醤・甜面醤)+辛さ(豆板醤・カイエンペッパー)+癖のあるコク(豆鼓・紹興酒)であることに注目して、もっとシンプルにしてみました。
「辛さ+旨味」はパンカペッパー1つだけでカバーでき、「癖のあるコク」はチューニョでしょう。見た目的にも豆鼓と似ているからばっちり(笑)
さらに、チューニョをつぶしてやることでとろみもつくから、片栗粉をわざわざ足す必要もありません。
味も山椒のおかげで中華らしくまとまっており、個人的にはすごく合理的なレシピができたなと満足です。
これ以外にももっといろんな使い方が見つかるはず。
まとめると、チューニョは「片栗粉と豆鼓の中間」といったところでしょうか?
結構くせがあるので使いどころを選びますが、はまれば一気に料理工程が楽になります。また面白いレシピが見つかったら投稿します!
今日出てきた食材は下記をご参照ください。
大阪梅田駅近くのペルー料理店『ロスインカス』
関西にはほとんど店がないからなぁ、と関東に行くたびにペルー料理店に通っていたのですが、ありました!大阪にも!
梅田駅から東に650mほど、梅田阪急東通りにある『ロス・インカス』というお店です。
テーブルにはメキシコやペルーの唐辛子が写真付きで紹介されておりマチュピチュの写真も。
壁一面には民族楽器や民芸品が並び、南米な雰囲気が漂っています。
なによりアルパカがもこもこ🦙🦙
現地だと子アルパカは常にぼーっとしてるから簡単に捕まえられるらしいけど、そんなことすると怒った母アルパカから追い回されるらしい…
なんてことをほのぼの思い出しながら着席しました🦙🦙
店長はペルー出身のおじいさん。日本語が達者で1人で切り盛りされていました。
話を伺うと、ペルーでもボリビアやメキシコの料理を食べることがよくあるとのこと。関西人が九州や北海道の料理も食べるのと同じなのかな。
それもあってか、メニューにはメキシコ料理が多く含まれていました。
せっかくなので、パルタレジェーナ(アボカドのサラダ)、アロスチレノ(唐辛子のピラフ)に加え、メキシコ料理のブリート(トルティージャ巻きミートグラタン)も注文しました。
メキシコの唐辛子、ハラペーニョのピクルスもついてきました。
初めにパルタレジェーナをいただきました。
パルタレジェーナは、アボカドのねっとりした食感の中からフレッシュオニオンやトマトが出てくるのがたまらなく美味しい。
食べた気のしないサラダには何度も出会ったことがありますが、ここのはすごく満足感が味わえます🥑
続いてアロス・チレノ。
メニューに唐辛子マークが2個付いていて、きっと辛いんだろうなぁと思いながら注文しました。
ただ「chile」は「唐辛子」を意味する名詞だったけど、語尾を〜noにして形容詞化する用法なんてあったっけ?
そんなことを思いながらGoogle翻訳に「chileno」と入れると「チリ人」と出てきました。
…え?チリ人ライス???
流石にはてなでいっぱいになり店長に聞いてみると「普通の辛いはpicanteですけど、唐辛子辛いのはchilenoと言うんです」と教えて頂けました。1つ語彙が増えたのでめでたし🙌
目立つブラックタイガーだけでなく、ピラフの中にも小海老がたくさん入っていて旨味の強いこと強いこと。アヒリモやアヒアマリージョのグルタミン酸との相乗効果もあってどんどんスプーンが進みます。
そして、ピラフの頂に座していたのはなんと生ハバネロ。いや流石に辛いよ!笑
一緒に頼んだカクテルをごくごく飲みながら食べ進めました。気づけば辛さの虜になっていたのは言うまでもありません。
最後にメキシコ料理のブリートです。
そろそろお腹いっぱいですが食べます…!
スプーンですくって一口入れてびっくり。いわゆる「ミートソース」と言うやつなんですが、本当に"肉"のソースでした。
牛肉ミンチを味付けして煮込み、煮汁が干上がったところでさらにミキサーにかけているのでしょう。今までに味わったことのない重厚で滑らかな舌触りです。
チーズも相まってとてもこってり。アボカドソースがむしろサッパリ感じられるほど。鶏肉がトルティージャに巻かれてふっくらグリルされておりそれもまた美味しい。
途中、サッパリが足りなくなったのでハラペーニョのピクルスをトングで何個か摘み入れました。
そうそうこの酸っぱい要素がほしかった…っていや辛いよ!(時間差)
他にも食べてみたい料理があったのですが、お腹の限界を迎えて今日は試合終了。
ちなみにドリンクはAll600円でたっぷり入っています。ここにも飲んでみたいのがたくさんあるなぁ…
総じてお得感のあるお店でした!
東京の大きな店ほどの豪奢な雰囲気はないけれど、マイペースでゆったり料理を楽しむことができます。また来ます、ごちそうさまでした!
追伸:シェフからチューニョやモラヤを使ったレシピをたくさん教えていただきました。明日さっそく投稿します!
↓しました!