旬彩もろきち

料理研究家や料理人、料理を愛する人のために、食の魅力や食文化の知識を発信します。また、飲食店経営のための経営学的知識や、ワンランク上の料理をするための科学的知識もあわせて紹介します。

魅惑のカカオ〜チョコだけでない食材としての顔〜

こんにちは、morokitchです。

今日は大阪鶴見緑地公園にある咲くやこの花館にて開催された「コーヒーとカカオ展」に行って参りました。目的はズバリ太田哲雄さんの「アマゾンカカオのおいしいお話とワークショップ」です。

今回の記事では、日本であまり知られていないカカオについての情報を紹介させていただきます。

さて、太田哲雄さんは、世界一予約の取れないレストラン「エルブジ」で東洋人として初めて厨房に立ったことで知られる腕の立つ越境料理人です。ペルーのアマゾンカカオを日本に輸入し、料理のための食材としてカカオを使う食のパイオニアとしても知られています(著者もありますので詳しく知りたい方は下記リンクをご覧ください)。

 

後日「Backpack FESTA」でカカオ×世界一周のプレゼンテーションで優勝した河野真奈さんの旅の理由である「カカオ農家」についても追記しました(訳あって半分手紙形式になっております)。

 

アマゾンカカオのペルー風オムライス

 

早めに会場に到着したので、ワークショップが始まるまでの30分にワールドトラベラーズカフェでアマゾンカカオのペルー風オムライスを頂きました。というわけで、カカオ紹介の前に少しばかりカカオ料理の食レポを。

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まず、上に散らばっているのはカカオニブ(チョコレートになる前の発酵ローストされたカカオ。後述します)を摘んでみました。ころっとした脆い歯応えが柔らかな卵と合い、赤ワインを口にした時のようなコクのある苦味と酸味を感じます。

続くデミグラスソースは玉ねぎの自然な甘みがしっかり引き出されていました。ワインのシャープな酸味香味は、あえて言語化するなら「丸く縁取りした四角い輪郭」という感じでしょうか???マイルドと角が立つの中間くらいのさじ加減でした。

そして特徴的なカカオ炊き込みご飯。これ単品だとなんとなくチョコ風の香りがする渋みあるご飯という感じ。

これらを卵と一緒に口に入れると、今まで味わったことのないような完全一体感を体験できます。いわゆる私達が食べ慣れたオムライスとは違い、子供ウケする洋風和食とは別の、大人の味です。

素材の味を活かした和食的な食味構成…美味しい!

ちなみに、間に挟まっているスチームチキンは誰にでも愛される味。しっとり火入れされた肉感がありながら、まるでフォン(フレンチの出汁)を飲んでいるかのような快いフレーバーがありました。この香り、どうやって出すんだろうか…?フォンに使われる食材で下味をつけて実験してみたくなりました。

 

食材としてのカカオ

 

さて、それではワークショップの紹介になります!

前半は、チョコレート製造において現れるカカオの中間製品の紹介と試食。後半は太田哲雄さん考案のフォンダンショコラとキャラメルポップコーンの試食がありました。

 

ワークショップ前半部分を要約すると下の図のようになります。

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カカオがチョコレートになるまで


 カカオ採種後の加工の流れは下記の通りです。

 

  1. 発酵:バナナの葉の菌を素に乳酸発酵と酢酸発酵を起こし、カカオの実の味を種まで浸透させる
  2. 天日干しとロースト:加熱することで初めてカカオの香りが立つ
  3. 脱穀:種の皮部分と胚乳の部分(カカオニブ)に分ける
  4. 圧搾:ココアパウダーの素とカカオバターに分離

 

私達が普段口にするチョコレートに至るまで、様々な加工工程が入り、その都度に中間商品も生まれます。乳脂肪分や砂糖を加えられた美味しいチョコレートはそれだけで魅力的ですね。しかし、チョコレートになる前の素材もまた、人の心を惹きつける魅力を持っています。

 

参加者には中間商品の試食が配られました。
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1つずつの特徴や味を紹介します。

  • カカオニブ:先述の通り、赤ワインに似たような強めの酸味と苦味渋みがあります。太田哲雄さんの使うカカオは浅煎りなので苦味は弱く、フルーティーさが際立つ明るい土色をしています。
  • カカオペースト:よくスーパーでカカオ80%のチョコレートなんかが売られていますが、まさにその原料という感じ。甘みは一切なく、純粋なカカオフレーバーを感じます。昔のチョコレート職人であるショコラティエは既製品のチョコを買って溶かしてガナッシュを加えたりという加工をしていたそうですが、最近のショコラティエはカカオペーストから買ってそこに乳脂肪分を足すことでチョコを作るそう。ちなみに乳脂肪分は香りを抑える効果があるのでたくさん入れれば入れるほどカカオの香りが弱められます。ストロベリーやオレンジのようなフレーバーチョコを作る際はカカオの香りを抑えて使うことが多いようです。
  • カカオマス(ココアパウダー):豆腐製造でいうおから的ポジション。脂肪分が一切含まれていないのであっさりしており、水分に対して均一に混ざることから菓子にもよく使われます。あくまで副生成品であるために商品価値は低く、安価なチョコレート菓子などによく用いられています。
  • カカオバター:カカオペーストを圧搾すると油分と固形物(カカオマス)に分離されるのですが、こちらは油分の方。一般的にはアルカリ処理して脱臭された上で食品として利用されるほか、リップクリームなんかにも使われるとか。太田哲雄さんは「せっかくの香りを消してしまうのはもったい」ないということであえて脱臭処理を施さずに製品化されています。ほんのりとチョコを想起する香りがあり、シチューに入れたり焼魚に乗せたりしても美味しそう。
  • ハレア:カカオの実を煮詰めたジャム。カカオの香りというよりはコクが活かされた粘度の高い甘いシロップ。加水して唐揚げにかけるのがオススメだそう。これを仕入れるのはすごく大変らしく、このシロップを作るカカオ農園にはガス水道電気が通っておらず、太田哲雄さんに使える伝書鳩おじさん?(笑)なる人が文通でやりとりしているそうです。土竈で煮詰めるらしいのですがその温度はどれくらいかも分からず、完全に農園のおばあちゃんの経験知に委ねられています。これは中々手に入らないわけだ、すごく希少ですね。
  • カカオ豆の殻:カカオの脱穀後に出てきた豆の皮部分はお湯で出してお茶にしたりします。水出しにすれば油分が浮いてこないので澄んだゼリーを作るのにも使えます。また、皮そのものの食感を活かすために砕いてクッキーやパンに混ぜてもOK。さらに、リラックス効果のある香りを放つので家畜の寝床に置いておくだけで豚や牛が健やかに育つなんていう使い方もあります。商品価値がないとはいえ、用途は様々です。

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こちらの豆殻のお茶、ハッとするほど鋭いチョコレートの香りがしました。

 

さて、写真の紫色でハイライトした食材も紹介しましょう。カカオの仲間に「ビコローレマカンボ」という品種もあります。成分分析によるとカカオよりも旨味が強く、無発酵のまま皮付きで食べられるくらいのポテンシャルを備えています。これをローストして塩するだけで上等なおつまみになりそう…(実際に素材そのままでもおいしかった)。

ただし、こちらは市場に全くと言っていいほど出回らない超希少食材。にも関わらず太田哲雄さんはこマカンボの油脂を抽出してマカンボバターなる商品まで作ってしまわれました。現在、ショコラティエと共に試行錯誤しながら「使い方」を模索しているとのことです。凄まじいパイオニア精神ですね。

 

一通り中間製品の味見をしたところで、カカオペーストにブラウンシュガー(南米では白い精製糖はほとんど使わず黒糖やブラウンシュガーを使うそう)を入れただけのものにお湯を入れていただきました。純度100%のチョコレートドリンクです。

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市販品とは違って乳脂肪分が一切加えられていないため、カカオの香りがダイレクトに鼻腔に刺さります。目の覚めるようなチョコレート感…!!!少し時間を置いて寝かせると、このトガりがマイルドになって風味が変わるそう。素材そのものの良さを追求する姿勢に和に通ずるものを感じました。

チョコレート作りというと複雑で難しいイメージがありますが、このカカオペーストに砂糖と水分(乳脂肪)を追加して固めるだけでできてしまいます(プロ仕様の場合、途中にテンパリングという温度管理が入ります)。

 

カカオを使ったスイーツ

 

最後に、太田哲雄さんの代名詞ともいえる2つのスイーツ「フォンダンショコラ」と「キャラメルポップコーン」をいただきました。f:id:morokitch:20200223170849j:image

フォンダンショコラは、「La casa di tetsuo ota」のある軽井沢の湧水とカカオだけで作られています。固めるための繋ぎは卵のみ。あとは、カカオペーストとカカオマスから作られています。小麦粉を一切使っていないグルテンフリースイーツであるのに加え、超加水料理に分類されます。超加水とは、どの材料よりも水が多い焼き菓子などに使われる言葉です(最近では、極めて優しい舌触りの超加水パンが話題になりました)。太田哲雄さんのフォンダンショコラも水分が多いためか、舌に染み込んでゆくような滑らかな口当たりが好印象でした。「重たい」イメージだったガトーショコラの概念を払拭するような挑戦的な料理でした。

 

もう一方のキャラメルポップコーンは、カリッとしたキャラメルの膜がとても嬉しい。一つ一つ丁寧にカカオ入りキャラメルをつけているのでどこをとっても均一な味わいを楽しめます。

意識せずに次々に食べ進めるのも贅沢ですが、最後に口に残る後味からカカオに想いを馳せるのも乙。先駆けてペルーのアマゾンへ足を運び、究極の美味しさを追い求めた太田哲雄さんの並々ならぬ苦労と熱意が結実した味です。一口あたりの価値の重さが違いますね。
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神秘の植物カカオの栽培

ここではトピックスとして太田哲雄さんのカカオの栽培や発酵工程について紹介します。

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中南米メキシコが原産のカカオは、幹から直接花や実がつく幹生花(カンセイカ)の仲間で、大きく分けてクリオーリョ種、トリニタリオ種、ファラステロ種の3種類に分類できます。そのうちの約99%が栽培種と言われています。現在では交配による品種改良や、1%の野生種を見つけ出すカカオハンターの努力によって世界で60近くの品種が作られています。

カカオは品種改良(継ぎ木や交配)が起こりやすい植物です。近くに異なる品種のカカオを育ててしまうと簡単に交配が起きてしまい、一つの木から緑、赤、黄色の様々な形のカカオの実がなってしまうこともあるそう。そのため、純血な単一種のカカオを栽培するためには木と木の間を数メートル離して育てるとのこと。この不思議なカカオの交配メカニズムは現代科学でも解明されておらず、パティシェや料理人のみならず科学者からも研究対象とされています。

一方で、カカオの花は小さく、その花の中に入り込んで花粉を媒介するのが蚊くらい小さな蜂に限られるために結実するのはわずか数%といわれています。

 

太田哲雄さんが栽培されているカカオは、フルーティな味が特徴のクリオロ種。病気に弱いため国内へは運んでおらず、ペルーの農園で育てられています。

発酵工程がポイントで、太田哲雄さんのカカオ農園では自然発酵方式を採用しているそう。カカオの発酵では、種がたっぷり入る木箱を5.6個並べておき、1日目の箱、2日目の箱…というように毎日毎日種を入れ替えていくのですが、あくまでその箱は雨除けでしかありません。ガスや電気を使った温度管理を一切することなく全てがアマゾンの気まぐれな気候に委ねられます。発酵させる箱の数が5個で済んだり6個必要だったりするのもその時々の気候と種の熟し具合によるのでしょう。

ちなみにペルーではカカオの多くは湿度の高いアマゾンで育てられていますが、クスコのような高地(山側アマゾン)でも一部育てられているそう。マチュピチュや町並みばかりが有名なクスコでも、現地の人にうまくツアーを組んで貰えばアマゾンの一端にふれられるかもしれません。

 

河野真奈さんへ:カカオ農園で働く子供とフェアトレード

 

ここから先は追記分です。2/25開催のBackpack FESTA 2020の世界一周コンテストの決勝戦を聞きに行きました。「私が世界一周する理由」をプレゼンテーションして最も優れたプレゼンをした学生に世界一周航空券が渡されるといった夢のあるイベントです。決勝戦では4人の学生がプレゼンを行いました。

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簡潔に言うと河野さんのプレゼンが最も自分に刺さりました。彼女は、チョコレートを食べるのが大好きなだけでなく、チョコレートの検定やマイスターの試験に合格し、更には他の学生がディズニーやユニバで遊んでいる時間に世界中のカカオ農園に足を運ぶほどのカカオ通。後継者のいなかった齢100歳のショコラティエに弟子入りしてその技術を継いだり、現地農園で働く子供達とチョコレートを作ったりとその活動は止まるところを知りません。

そんな彼女が世界一周をしたいと思う理由が、消費者と生産者のギャップでした。私たちはチョコレートを食べて幸せになりますが、必ずしもそれを作っているカカオ農園の人々が幸せであるとは限りません。プレゼン途中に流れた動画では、カカオ農園で働く子供達をクローズアップしたものでした。早く働けと怒鳴られながらカカオの実を取りに木へ登ったりナタを使って種子を取り出したり、あるいは罰としてスクワットをさせられていたり、彼らはカカオが何になるのか何のためにやっているのかすら教えられていません…「学校へ行きたい」「僕は一生ここで働かなくちゃならないんだ」わずか6歳の子供が涙ながらに語る絵には強烈なメッセージ性がありました。

彼らは当然チョコレートの味を知りません。河野さんは、そんな彼らのもとにチョコレートを運び「あなたたちが作っているチョコレートはこんなに美味しいんだよ」「あなたたちのおかげで世界ではたくさんの人が幸せになっているんだよ」と伝えるのが夢だそう。日本ですら働きがいや生きがいと叫ばれている世の中、彼女は我々から遠い世界の子供達に生きがいを与えて幸せを感じてほしいという確たる想いをプレゼンしました。

 

自分でびっくりしたのですが、それを聞きながら涙が出ました。河野さんの人心掌握がうまかったからであり、私がペルーへ料理修行に行くのと重なったからであり、何より、自分よりも遥かに強いハートと目的意識があったからでしょう。精神的な美しさを目の当たりにした感動に心を揺さぶられたのだと思います。

イベント終了後に登壇者へのメッセージカードを送れたのですが、直後に用事があり頭の中も何をどう書けば伝わるのかまとまりませんでした。正直に「今うまく書けないのでブログから読んでください」なんて書いてしまいました。多分届かないんだろうけど、もしかしたらという思いを込めてここにしたためさせていただきます。

 

河野さん

backpack FESTA世界一周コンテストでの優勝おめでとうございます。先述の通り、プレゼン非常に感動いたしました。

私も河野さんとカカオが好きなように料理が好きで、美食国として有名なペルーの料理を日本へ持ち帰り和食を進化させたいという思いのもと渡秘することになりました。私が河野さんのプレゼンに心打たれたのは河野さんの語る「誰のために」がはっきりしていたからでしょう。もっともっと具体的に誰のために料理を学ぶのか、旅を通して学びたいと感じるようになりました。

メッセージカードに少し書きましたが、太田哲雄さんという料理人兼実業家の方がおります。彼は、最高の食材を求めてペルーのアマゾンへ赴いただけでなく、生産者が正当な利益を得られるようなフェアトレード(チョコレート生産のためにいくらカカオが売れても仲介業者や加工業者に利益を奪われるので第一次生産者は貧しいままである。その不均衡を解消して生産者を豊かにすること)を行っています。きっともうすでにご存知の内容でしょうが、河野さんであれば、子供達にやりがいを与えた上で根本的な問題解決にも取り組むだけの環境が整っていると思います。とにかく、これから数ヶ月は世界一周カカオ農園の旅を楽しんでください。生産者にやる気と生きがいを与える力は河野さんが誰よりも大きいことと思います。心より応援しております。

最後に、私から少しだけ助力できることがあるとすればカカオを使った料理への誘いだと思います。ブログ本文でも述べたように、カカオはチョコレートのみならず料理への利用も進み始めています。〇〇産カカオが〇〇さんのカカオになれば、チョコレートのみならず、料理へのブランディングも大きく進歩するに違いありません。消費者のニーズが倍々に大きくなれば、生産者の潤いも大きくなります。なので、ほんの少しだけカカオ原材料を使った料理に目を向けるのも面白いんじゃないでしょうか?というお誘いです。

きっとこれから、地理的な距離や国の違いの障壁はどんどん小さくなるのでしょう。世界の隅々まで足を運び小さな農家を発信する力を持つ人はそうそうおりません。しかし、知られるべき農家やそれを知りたい人は山ほどいます。私は、料理をする者として河野さんのご活躍に大いに期待しておりますし、ゆくゆく自分に発信力がつけばできる限りの支援もしたいと感じました。

もしこれをお読みいただけたなら幸いです。

頑張ってください。

 

なんかファンレターみたくなってしまいましたね(笑)きっと沢山のメッセージを頂いているでしょうから、このブログが読まれるかは不明です。いずれにせよ、生産者の目線から世界で沢山の笑顔を作ってくるのでしょう。

私自身に足りていなかった「生産者目線」も追加のテーマとして、ペルー料理修行をさらに充実させようと思いました。

 

長くなりましたが今日はここまで。

2/26の夜にアマゾンカカオを使った居酒屋出店をするので、その成果もゆくゆくはリンクとして貼りたいですね。

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では仕込み頑張ります!

ペルー旅行のいろは:2020年版「美食の街アレキパ」の暮らしや魅力

こんにちは、morokitchです。

昨晩、再び大阪市平野区喜連瓜破駅近くの『ラテン居酒屋 ソルーナ』に行ってまいりました。ペルーの旅行事情について大収穫でしたので、美味しいソルーナの料理も紹介しつつ、同志の旅行者のために情報の一部を共有させていただきます!

「ペルー行く予定ないよ〜」という人のためにも、料理レポートや面白エピソードを添えて楽しめる記事になるよう工夫しました( ¨̮ )

※店情報はこちらから↓

ラテン居酒屋 Soluna(平野区/居酒屋)<ネット予約可> | ホットペッパーグルメ

 

さて、実はソルーナに来店するのは2回目。日雇いバイトで大阪に行った帰りに寄って、チチャロン(カリとろ豚肉)、ポヨアルマニー(鶏肉のピーナッツソースがけ)、タマレス(ペルー風ちまき)を頂きました。ペルーの話に加えて、サンポーニャやギターを弾いてくれたりと、すごくフレンドリーでサービス精神旺盛な店長でした^ ^

morokitch.hatenablog.com

 さて、今回は先輩と共に行ったので胃の容量は2倍(笑)

他の種類の料理も沢山いただきました!

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この投稿では、今回いただいた料理の紹介と、アレキパ出身のオーナーさんから伺った「ペルー旅行のいろは」についてまとめたいと思います。

特に、旅行についてはじっくり聞けたので気合を入れてまとめてみます。

 

 

ソルーナのペルー料理(前編)

パパアラワンカイナ

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先輩リクエストの定番料理。湯がいたジャガイモにクラッカーでとろみづけしたチーズと唐辛子のソースが掛かっています。チャームポイントは紫色のペルーオリーブですが、なかなか手をつけようとしない先輩。

「あ、これオリーブだったんだ」

まぁ確かにペルー料理でない限りこの色は見かけることないですよね、安心して食べられますよ(笑)

ポリャーダ

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こちらはペルー風のタンドリーチキン。よく見かけるインド風(ターメリックをたっぷり使った黄色いチキン)ではなく、アヒミラソルかアビパンカ(辛味の弱い旨味唐辛子)を使っているのかな?食欲をそそるオレンジ色で香辛料の強い匂いもありませんでした。

極め付けはシェフ特製のワカタイ(ブラックミント)を使ったソース。玉ねぎやニンニクと油で作ったのでしょうか?旨味と甘味がしっかりありつつ、ハーブの爽やかな香りがチキンとマッチしていました🐓

レンテハスコンペスカードフリート

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これはレンズ豆の煮込みに魚のフライを添えた料理。

「何の魚か分かりますか?」

というシェフの問いに、もはや食い気味くらいのタイミングで

「全然分かりません!」

と即答する先輩。ここまで潔いと気持ちが良いですね(笑)正解はサバらしいです。水産資源の豊富なペルーではサバの他にカツオなんかも使われるとのこと。魚は季節によって変わるのかな。

個人的には上に添えてあるサルサがツボでした(んまぃ)

ペルー旅行のいろは

さてさて、ここらで旅行の話もしていきましょう。

私が3/3〜3/20でペルーに行く事を伝えたところ快くアドバイスをしていただきました。

大阪人の魂をもってペルーへ臨め

ペルーの食材調達といえばメルカド(市場)。メルカドに行けば、その街の雰囲気が全部わかるとも言われるほど。特に関東出身の旅行者は気をつけなければならないことがあります。それは「言い値では買わない」ことです。

特に、相手が観光客だとわかると相場の2倍、3倍の値段でふっかけてくることも多いそう。せっかく買い物をするのなら賢い消費者でありたいですよね。

「Disculpa. ¿Cuanto es? (すみません、これいくらですか?)」

と聞いた後に必ず

「¡Caro! Descuento, por favor. (高いですよ〜、安くできませんか?)」

と言って価格交渉をしましょう(笑)

観光客だからそうすべきというわけではなく、現地の人も当たり前に値切りをするんですから別に恥ずかしいことではありません。

「これ2つ買うから10ソルまけてよ」

みたいなペルー人流のやりとりを楽しむくらいの気持ちが良いかもしれませんね。

値切りに慣れていない関東の方々は、値切り風土の根付いた家電製品コーナーに行って「え〜これ〇〇電気は5000円で売ってましたよ、もう少し安くできませんか?」とか「広告のテレビに加えてDVDプレイヤーも買うからもう少し安くしてくれませんか?」

なんて練習しておきましょう(笑)電化製品は価格競争大好きな業界ですからやりやすいですよね。

 

ただし、どこでも値切りが通用するわけではありません。基本的には市場や個人商店のみ。大きなモールでの買い物や大手ブランドの服や靴は値切れないので注意しましょう。

…なんですが、店長の息子さんはadidasNIKEの衣料品や靴すら値切った実績を持っているとか(普通じゃありえないそうです 笑)

本当にお金がなくなって切羽詰まった時はやってみる価値がありそうですね(笑)

パチモンゲットだせ

ちなみにブランド品にも注意が必要なことがありまさに。チャイナタウンみたいなパチモンがメルカード(市場)には多いそうです。

明らかにアディダスではないけどアディダスだと言い張ってきたりとか、そんなこともあるらしいです。そういうあからさまな商品はどんどん値切っちゃいましょう。

聞いたところによると、PUMAを真似たllama(リャマ🦙)のパチモンブランドTシャツを見たことがあるとか。これははむしろ欲しいですね(笑)

気になるペルーのトイレ事情

トイレットペーパーは万能紙

旅行で気になるトイレ事情。ペルーはどうなのでしょうか?

下水道などのインフラがまだ整っていないこともあって、ペルーのレストランなどでお手洗いを借りるのは有料になります。その際に紙をくれるのですが、その量がと〜〜ってもケチ(笑)

明らかに足りないのでトイレットペーパーは持参しましょう。

ペルーでは大抵2個セットで売っているので、一方はカバンに、もう一方は芯をとって移動用バッグのサイドポケットに入れ、ロールの内側の方(芯を抜いた方)から使います。すると、わざわざロールを手に持たなくてもスルスル使えるようになります。使い勝手はウエットみたいな感じですかね。

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ペーパーは日本から持っていっても良いのですが、ペルーで買ってしまうのもあり。というのも、ペルーのトイレットペーパーは固くて水に溶けないので、

  1. 雨で多少濡れても大丈夫
  2. バス運転手に行き先を伝えるためのメモ用紙としても使える
  3. とても安い

なんてメリットもあります(笑) 

ただし、トイレに詰まってしまうので決して流してしまわないこと。ゴミ箱があるはずなのでそちらに捨てましょう。

 

便座はどこへいった?

ペルーのメルカドに行くと、便座が売っているのを見つけるかもしれません。なんでって、わたしたちが慣れ親しんだ便座は「トイレの標準装備」ではないからなのです。ペルーの便座は日本で言うウォシュレット的なところでしょうか?

なので、便座がない時は、本来それがあるべき場所に紙を敷き詰めて座るか、足を掛けてしゃがみましょう。お金持ちが行くようなレベルのレストランは流石に大丈夫ですが、バックパックで行くような際は戸惑わないように覚悟しておくと良いです。

 

お湯が出るって言ってたじゃん!?

温泉・湯船文化の日本人、ホテルで水シャワーしかないとがっかりしますよね。なので事前に

「このホテルはお湯出ますか」

「はい出ますよ」

と確認しておくのがgood。

しかしそれでもお湯が出ないことがあるのです。しかし、ただちに「嘘やんけ!騙された」と言ってしまうのは勇足。ここで、ホテルのスタッフは嘘はついておりません。ではなぜ、お湯が出るはずのホテルで水浴びをする羽目になるのでしょうか?

 

日本では、電気やガスでお湯を沸かすのでいつだって温かいお湯を浴びることができます。しかし、ペルーでは、水を貯めたタンクの中をソーラーで温めるシステムのものがまだ多く、溜まっている分を使い切ると水しか出なくなってしまうのです。

つまり、先程のやり取りには

「このホテルはお湯出ますか」

「はい(普段は)出ますよ(他のお客さんが使い切っちゃうと水しか出ないけどね)」

なんていう裏があったのです(笑)

 

水に弱い日本人は確実にお湯の出てくる日中や朝のうちにお風呂を済ませておくのがベター。安宿だと、日本みたいな、就寝前にゆっくりお湯に…なんてのは難しいことが多いですね。あるいは、気になるならホテルに泊まる前に、ソーラーかガス電気のどちらかを確認しておいても良いでしょう。

ちなみに、店長も20歳まで逞しく水で体を洗っていたそうですが、日本の湯船に慣れてからはペルーの水風呂に耐えられなくなったそうな(笑)

一度湯船の快楽を味わうと戻れなくなるんですね〜

ソルーナのペルー料理(後編)

観光談議は一時中断で美味しい料理の続きです🍳

先ほどの料理はぺろりと平らげてしまったので追加注文!

ケサディーヤ

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こちらは小麦粉で作ったタコス生地でチーズを挟んだ料理。こんがりパリッと焼いたケサディーヤを噛むと、中から塩味の効いたチーズがトロッと出てきます。ビールが飲みたい〜🍻🍻🍻

ピカロネス

写真を撮り忘れました。ペルー風ドーナツです🍩

かぼちゃとさつまいもを潰して作った記事はもっちもちに仕上がっており、蜂蜜だけをかけた素朴な味わいは優しい印象でした🎃🍠🍯

黒蜜をかけるイメージが強かったんですが、蜂蜜もイケてますね!

ソルーナに来たら外せない逸品

前も食べたけどまた頼んでしまいました「チチャロン(豚肉の揚げ焼き)」です。

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ここのチチャロンは沖縄のラフテーの製法と組み合わせているおかげで、めちゃくちゃ柔らかく仕上がっています。何度も食べたくなる看板商品です…!

ではでは、贅沢なおつまみと一緒に旅の話の続きといきましょう。

アレキパは魅力の詰まったコンパクトシティ

アレキパはカテドラル(教会)を中心に街が広がったかつてのペルーの首都です。教会の塀に沿って建てられた二階建ての廊下が美しく、レストランやショップが軒を連ねる景色は観光客の心を鷲掴みにするんだとか(写真を見せてもらいましたが、ライトアップもきれいでした✨)。アレキパは「地球から月が生まれる時に月が地上に置き忘れた街」とも言われ、シジャールという白い石灰岩によって造られた白い街並みが有名です。また、ペルーきっての美食の街とも言われ、多くの郷土食を育んだ魅力的な土地でもあります。

 

店長はアレキパ出身らしく、色々と現地情報を教えて頂けました!

街の中心のカテドラル(教会)の広場には、夜になると出店がずらり。アンティクーチョス(串焼き)やサチャパパス(フライドポテトとウィンナー)、ローストチキンなどの屋台が現れ、まるでお祭りのような様相に。クラブやバー、カラオケといった夜の娯楽も揃っていて足りない物はないと言えるほど。

昼間も教会の周辺にはレストランや民芸品がずらりと並んでおり、レストランにも困らないそう。カテドラルから数ブロック10分程度歩くとぐんと値段が安くなるので、買い物の際は少しだけ歩くのがおすすめ。ただし、お洒落な高級品は中心部にしかないのでそこで買いましょう。ショッピングモールなんかもあるそうで、ここでお土産を買うのが最もコスパがいいそうです。

スキミングにご用心

買い物にはお金が必要ですが、両替は注意しながら行う必要があります。というのも、個人商店なんかの前においてある両替機にはスキミングの機械が付けられているかもしれないからです。

「あなたがキャッシュカードを通した瞬間に内部の磁気情報が抜き取られて、いつの間にかカードでアルパカ200頭が決済されていた」

なんてことも起こりかねないのです。なので、ATMからお金を引き出す際は大きなお店の物を使うこと!空港以外では隠しカメラなんかもある可能性があるので、暗証番号を打ち込む際は手で隠しながらボタンを押すようにしましょう。

クスコへ行くならアレキパから

アレキパは美食がたんまりなだけでなく、クスコへの中継地としても優秀です。というのも、高山病のリスクを大きく減らせるからです。

マチュピチュのあるクスコへは、リマから直接フライトで行くコースが一般的ですが、このコースではほんの2時間足らずで海抜0mから3100mへと移動することになり、高山病の発症リスクが非常に高くなってしまいます。

一方で、リマからアレキパ(標高2100m)へのフライトであれば高山病にかかることはほとんどありません。ある程度、身体を高地に慣れさせてからクスコに行くのが良いでしょう。

とはいえ、2100mから3100mですら、飛行機で移動するとなると高山病リスクはまだまだあります。一番体に優しいのは、アレキパからクスコまで夜行バスを使うコース。これなら少しずつ身体を高地に適応できるので、ぐんと高山病リスクを下げることができます。ただし、途中に標高4000m級の山を越えるのでこまめに水分を摂るように心がけましょう。

さらに気を使うなら、標高が高くなるポイントで起きておくことでしょう。眠ったまま高いところに行くのも身体の適応が遅れて高山病にかかりやすくなるそうなので爆睡にだけは注意しましょう。

高山病を防ぐためのポイントは

  1. 一気に標高を上げない
  2. 水をこまめに摂る
  3. 眠ったまま標高を上げない

です。お気をつけて!

 

余談ですが、料理やお土産の面でもアレキパを経由するメリットがあります。

というのも、アレキパ人からするとクスコの料理はそんなに美味しくないそうです(標高が高い分、火力に制限があるからかな?植生も少なく手に入る食材も限られていたために料理技術が発達しなかったのかも)。もちろんアレキパにはないお粥のような郷土料理があったりはするのですが、クオリティは今ひとつとのこと。観光街ゆえ物価も高いのを考えると、食の都アレキパでお腹を満足させてから行くのが良いのかも。そもそもクスコの目玉は遺跡ですもんね。

(「どうしてもクスコでうまいもんが食べたい!」という場合は、高級レストランに行く以外に、料理教室に行ってみるという手もあります!)

 

 

おまけ:フレンドファンディングについて

他にも空港で気をつけることやら料理のことやら本色々なお話を伺えました。多分隣で聴いてた先輩をペルーに連れて行っても大丈夫なくらいでしょう(笑) 

ちなみに、アレキパの旅程相談の時に「実はまだパスポートすら取れてなくて…」みたいな話をした時に、さすがにコイツは心配だ、と思わはったんでしょう。幸いにも店長さんのアレキパ帰省の時期と私の旅程が近かったこともあって、親戚のお家に泊めて頂けることになりました。この厚意には感謝してもしきれません…泣

お土産は京都の日持ちのするお菓子かなぁ。日本酒なんかもありかもしれない。少しでも感謝の気持ちが伝わるものにしよう。

 

さて、先日から告知してきたフレンドファンディングの有効期間も残り5日となりました。皆様の支援のおかげで目標金額の5万円にずいぶん近づきました。

フレンドファンディングといいソルーナの店長の助けといい、いろいろな人に支えられ生かされている感覚を最近強く感じます。高校時代に部活で「支えてくれた方々の感謝を忘れず…」なんていうセリフをよく使いましたが、生活すること自体の過酷さや苦労を知って初めて、そういう「支え」のありがたさをひしひしと感じられるようになりました。

相変わらず、修論執筆やら引越しやら渡秘準備の合間にバイトを続けておりますゆえ、少しでも支援いただけると幸いです。

↓フレンドファンディングのリンクはこちら

polca.jp

旅程についてもおおよそ固まりました!5日後のフレンドファンディング終了後に必要資金などを全て計算してブログに投稿したいと思います。 

それではまたの更新をお楽しみに。お読みいただきありがとうございました。

ペルーで生まれた最先端和食~ニッケイ料理とニッケイフュージョン料理~:食文化講義4

こんにちは、morokitchです。

今日はペルー料理と和食の深~いかかわりについての記事を書くことにしました。

 

さて、皆さんは世界の美食家の注目を集めている『ニッケイフュージョン料理』という新ジャンル料理をご存じでしょうか?これは、世界美食国ランキング1位を獲得したペルー料理と我が国日本の伝統和食とが融合した最先端料理です。

ペルーで最も美食家に愛されているのが日系3世のツムラ・ミツハルシェフによるMAIDOでしょう。

www.theworlds50best.com

MAIDOはThe World's Best 50 Restaurants 2019の10位にランクインしている超有名店で、ジューシーに焼き上げた鱈を味噌とナッツで和えた料理や、ウニライス、50時間かけて作った牛ショートリブ、豆腐チーズケーキアイスクリームなど前衛的な和食とペルー料理のマリアージュが楽しめます。

では、このようなニッケイフュージョン料理はいかにしてペルーで醸成されたのでしょうか?時代を1910年にまでさかのぼり、日本の移民がペルーで守り続けていた和食と、それがペルーの政治や文化に与えた影響から答えてみましょう。

ペルーにみられる料理の種類

まずは、ペルーならではの料理をジャンル分けしましょう。ざっくりと分けて下記の4種の料理が見られます。

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ペルー料理の進化・拡大の過程

まず、ペルー料理は古くからペルーで食べられている伝統料理です。魚を角切りにしてレモン果汁で締めたセビーチェという料理や、牛の心臓(ハツ)を唐辛子ベースのタレに浸けて作ったアンティクーチョ、南瓜をつぶして揚げて黒糖ソースをかけたピカロネスというおやつなどシンプルなものが多いです。

※さらに詳しく分けると真の伝統料理と1521年にスペインがインカ帝国に侵攻してから生まれた西欧風のクリオーリャ料理、三角貿易が活発になってから流入したアフリカ系ペルー料理に分けることができますが、ここでは同一料理として扱います。

そして、ペルーに定住を始めた中国人が広めたチーファという中華風ペルー料理。もともとペルーも中国も肉食文化があったので融和しやすく、かなり早い段階からペルー人に認められていきました。輸入コストの高い本格中華ではなく、ペルーで手に入る食材を代わりに使うことで作られているのが特徴です。初めにペルーで開店した中華料理屋の店名がチーファだったことからそれ以降に開店したあらゆる中華料理全般がチーファと呼ばれるようになったんだとか。

ここからが、今日の本題。

ニッケイ料理は、ペルーへ渡った日本人の子供(日系2世)が作った料理です。彼らは日系1世の親が作る日本料理の影響を強く受けつつも、自分自身はペルー人として生活しており、自然と日本とペルーを融和させた料理を作ることができました。ロシータ・ジムラによる薄切りのタコをペルーの紫オリーブソースで和えた「プルポアラオリーボ」を始めとする料理が代表的です。

そして、ニッケイフュージョン料理。これは大きく2種類に分けることができます。

1つ目は、日本やペルー日系人の板前がペルーに渡って作り上げた高級志向のフュージョン料理。寿司にみられるような高度な包丁技術や洗練された色彩感覚をペルーに取り入れたものになっています。

2つ目は、ニッケイ料理やニッケイフュージョン料理のブームに乗じて日本で料理修行をした日系2,3,4世らが作り出した大衆向けのフュージョン料理。今や日本文化ともいえるようになったラーメン、カレー、丼といったようなメニューです。「高くて量が少ない」高級志向のフュージョン料理と「安くて量の多い」ペルー料理の中間の選択肢である「そこそこの値段でしっかり食べられる」を提供したという点が特徴でしょう。

これらを図示すると下記のようになります。

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新しいペルー料理と和食との歴史的な関わり

 ニッケイ料理の誕生経緯:日系1世が守り抜いた和食の神髄

大まかな分類はわかっていただけたでしょうか。まずは、ニッケイ料理の誕生経緯を見てみましょう。ニッケイ料理は、先ほども述べたように『ペルーへ渡った日本人の子供(日系2世)が編み出した料理』です。

ところで、どうして「日系」と呼ばれる人たちが誕生したのでしょうか?

1899年4月3日に初めて日本人移民がペルーに渡りました。彼らは半奴隷的な苦力(クーリー)と呼ばれる中国人労働者の代わりに雇われた契約移民です。当時、世界で砂糖が貴重な調味料として認識されていることもあって、サトウキビの栽培とその製糖に膨大な需要があったのです。1900年代の日本はまだ貧しい国でしたから、ペルーへの出稼ぎで大金を稼ぐことも可能だったのです。

彼らは「日系1世」と呼ばれ、食文化の違いに悩ませられながらもペルーで和食文化を保ちました。農場では干し肉なども配られましたが、肉食を禁じられている仏教徒はそれをかたくなに口にせず、来る日も来る日も塩がゆのみを食べていたそうな。口にするとしても、水で戻してから加熱調理するという方法を知らなかったため、固いままの肉を炙って食べることしかできなかったようです。日系1世にはペルーの食文化に否定的な人が多く、見慣れぬ食材避けて和食を食べることに苦心していました。

しかし、日本から持ってきた醤油や味噌も底をつきてしまいます。それを契機に、饅頭、大福、汁粉、餅、最中、羊羹、日本酒、うどん、そばなどを扱う小売業者も現れました。他にも、日本の野菜の栽培まで始まったそうです。世界の反対側のペルーでもしたたかに生きようとする日系1世たちの精神力には目を見張るものがありますね。

このようにしてペルーで守られた和食ですが、ほとんどペルー人の口に入るものではありませんでした。あくまで、日系1世が生粋の日本人であるというアイデンティティを保つために生産消費されていたのです。

 ニッケイ料理の誕生経緯:ペルー政府が生んだ料理と日系2世の活躍

日系2世は日系1世よりも恵まれた環境で育ったといえます。

2世は1世ほど日本へのこだわりはなく、ペルーの食文化にも抵抗なく慣れていきました。また、教育環境もより整っており、スペイン語を使いこなして現地のペルー人たちと関わるなかで、多少の違和感はあれど自分自身をペルー人として疑うことなく成長したのです。一方で、家庭内では1世が作る和食を口にしていましたから、和とペルー両方のエッセンスを同時に摂取した世代といえます。

彼らの料理が注目を浴びるようになったきっかけは食糧問題にありました。

1950年頃に首都のリマへの労働機会を求めた大規模な人口流入が起こりました。これに伴い、地方の低所得者がリマ周辺を不法占拠して住み着いてしまうという現象が恒常化しました(バリアーダスと呼ばれる)。ペルーはそれまで肉を中心とした食生活が送られてきましたが、これをきっかけにたんぱく源の不足が発生しました。

この状況を案じたペルー政府が魚介類の消費拡大運動をおこしました。これまで活用されてこなかった水産資源に注目したのです。そこで白羽の矢が立ったのが日系2世の料理人たち。彼らは日系1世の食教育もあって包丁技術に長け、魚の扱いにも慣れていました。日系2世たちは、その技術を以てペルー人の口に合った魚介料理を次々に世に提示していったのです。先述のプルポアラオリーボ(蛸の薄造りにオリーブソースをかけた料理)や、ティラディードのような刺身に唐辛子ソースをかけた料理もこの時期に生まれたといわれています。

こういった新しいペルー料理は、世界の美食家の注目を大いに集めました。1970年代の北米での和食ブームのあおりも受けながら、ニッケイ料理は急激にその文化的価値を高めたのです。このように、ニッケイ料理はペルーにおける移民の和食から単線的に派生したのでした。

ニッケイフュージョン料理の登場

一方で、ニッケイフュージョン料理は、ペルーに渡って変容したニッケイ料理と生粋の現代和食が再接触することによって生まれたものです。

高級志向のニッケイフュージョン料理がそのはしりで、先述のMAIDOのツムラ・ミツハルシェフ、HANZOのカスガ・ハジメシェフ、アメリカやメキシコにも支店を広げたディエゴ・オカシェフの3人が特に有名です。板前がペルーに渡って現地の食材で料理をするというのが典型ですが、続々とペルーでニッケイフュージョン料理を作る料理人が登場するにつれて一般ペルー人にも板前修業を乗り越えて料理人となるものも現れました。こうしてニッケイフュージョン料理は世界に通用する高級料理としての一角を築いたのです。

そして、こういったニッケイ要素の人気に乗じて生まれたのが大衆向けのニッケイフュージョン料理です。日本への出稼ぎを経験した日系人やペルー人が、ラーメン、かつ丼、カレー、餃子のような現代日本料理をペルーに輸入しました。リマに店を構えるラーメン屋NARUTOは、鉄腕アトムやワンピースのルフィ、ドラえもんキン肉マンなどの人形が飾られており、アニメ文化ごとクールジャパンを表現しています。私のような生粋の日本人からすると「なんとも雑多な(笑)」という印象ですが、これぞ海外から見たJapanなのでしょう。 


This photo of Naruto Japanese Food is courtesy of TripAdvisor

 

まとめ

ペルーで生まれた和食要素をもつ料理についておわかりいただけたでしょうか。

最初の日本からの移民の食傾向を受けて育った日系2世がニッケイ料理を作り、和とペルーの融合に世界の美食家らが高い文化的価値を見出しました。その流行に乗って、より洗練された板前文化をペルーに持ち込むことでニッケイフュージョン料理が生まれ、大衆にもラーメンのような和の食文化がもたらされ始めました。最後にもう一度、図を示しておきましょう。

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新しいペルー料理と和食との歴史的な関わり

このように食文化史から料理を分類しなおすことで「文化的価値の高い食」がどのようなものなのかを考えることができたのではないでしょうか。また、和食が世界でどのように活躍しているかを知る契機にもなったはずです。

より深く勉強したいという方は、今回の記事投稿にあたって参考にさせて頂いた、柳田利夫先生の『ペルーの和食 やわらかな多文化主義』をご覧ください。時系列に沿って、より詳細に日系人たちの食と生活がまとめられています。

 

フレンドファンディングについて

長い文章になりましたが読んでいただきありがとうございました。

さて、前回の記事にも書かせていただいていますが、私はペルー渡航にあたってフレンドファンディングでの資金調達を行っています。

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私は大学院修士論文提出後の3月に、17日間ペルーに滞在して料理技術を探訪する旅に出ることにしました。

本当は内定先への入社時期を10月にして4月にバイトで資金調達、5~7月にペルー滞在という形式にしようと思っていたのですが、オリンピックでバタバタする関係か、内定先から4月入社に変更するように通達が来ました。なので、特に資金面で出発準備が整わないままの緊急発進になりました。

現状、知り合いの叔父が経営するペルーのレストランの厨房見学ができるかもしれない点、食文化博物館が無料で観覧できる点などが頼みの綱ですが、現地での書籍購入にかかる費用や、そもそも料理を食べる費用がない状態です(大学院の研究の傍らバイトで貯められる資金では、ペルーで1日当たり500円くらい使えるのがやっとで、超安宿の宿泊費だけで消えてなくなってしまいます…)。

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前回の投稿でPolcaから5000円、直接手渡しで5000円の計1万円の支援をいただきました。ことをお伝えしましたが、本日さらにPolcaで5000円の支援を頂き、一日当たり1100円ほど使えるようになりました。本当にありがとうございます…!現段階でも、いろいろ覚悟して野宿や断食やらで数日節約すれば、クイ(天竺ネズミ/モルモット)やアルパカを使った中級層の料理も報告できるかもしれません。

しかし、日本でペルー人経営の料理屋を訪問しての体感ですが、やっぱりその店の料理を食べなければ詳しい話を聞くことはできません。おそらく市場でもいくつか商品を購入しない限り、カタコト日本人を相手にしてくれはしないでしょう。日本みたいに「アルパカの試食どうですか~」なんて文化があればいいのですが…。どうしても、資金不足な状態では仕入れられる情報に限界が伴います。

まだまだ資金は足りない状況ですが、キッチンの使える安宿に泊まって、現地のレシピブックや市場の生産者から聞いた方法で料理をしたり、あるいは、自分で作った料理をペルー人に食べてもらったりすることでより濃密なアナログ知識を仕入れたいと思っています。

下記リンクより趣旨や支援のお返し等の詳細をご覧いただけます。

ご協力いただけますと幸いです。

polca.jp

これから何度かフレンドファンディングの声かけをすることになりますが、温かく見守っていただけると嬉しいです。進捗もその都度報告しつつ、そろそろ、資金計画や行程表も発表したいと考えています。

それではまた次回!お読みいただきありがとうございました。

 

フライドポテト王者決定戦:一番旨い揚げ芋はどいつだ?タピオカの原料キャッサバ芋も参戦!

こんばんはmorokitchです。

今日のテーマはフライドポテトです🥔🥔🥔

フランスを発祥として世界各地に広がったフライドポテトは、ファーストフード業界で最も名を馳せた料理と言っても過言ではありません。一般的には『ジャガイモ』が用いられ、フランス人によるとベルギー産ジャガイモを使ったフライドポテトが最も美味しいんだとか。数ある揚げ料理の中では特に珍しく『素揚げ』するだけで作れてしまうというラクチンさが特徴でしょう。

さて、このフライドポテトですが、当然ほかの芋類でも作ることができます。

今回は

  • アンデス山脈代表:ジャガイモ
  • 東南アジア代表:里芋
  • 日本(中国説もある)代表:長芋
  • アマゾン代表:キャッサバ芋(タピオカの原料)

の4種を用意しました!

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ちなみに、キャッサバ芋はタピオカの原料で、わざわざ五反田から購入してきたレア物。このフライドポテトは、ペルーでは「ユカフリータス」という固有名まで与えられているいわば異国の手練れ。果たして労力に見合った結果を出してくれるのか?大きな期待がかかります。

では、この中から一番おいしいフライドポテトの王者を決定します!

 

 

ルール説明

まずはルール説明。フレンチの魂に則って、最も美味しくなると思われる方法でそれぞれの芋をフライドポテトにします。すなわち、二度揚げを行います。

大きめに切った芋を高温の油に放り込み、表面が色づく程度火を通した後に取り出して冷まします。この最初の揚げで表面のでんぷん質が変質して防護膜ができ中心部の水分を閉じ込めることができるのです。続く二度目の揚げで閉じ込められた蒸気が内部を巡って中身は蒸し焼き状態に。その結果「外はカリっと中はふんわり」という最高の状態に仕上がるのです。

とある和食の巨匠が「天婦羅は蒸し料理です」と昔テレビで言っていたのを覚えているのですが、天婦羅がサクふわに仕上がるのと、フライドポテトがカリふわに仕上がる原理は全く同じですね。

(まさにシンプルにして合理的なケミカルクッキング…フライドポテトのでんぷんにまつわる話は奥は深すぎるので今回はこのへんで割愛。後日化学記事書きます)

味付けはシンプルに塩のみで行い、下記評価項目で勝者を決定します

  1. 調理工程の簡単さ(3点)
  2. 見た目の美しさ(3点)
  3. 美味しさ(4点)
  4. 特記事項(3点)

を軸に王者たる芋を決定します。

 

試合実況

それでは試合開始!かかる手間や時間も評価に含めます。

下処理編

まずは下処理をします。ジャガイモ・里芋・長芋は、スーパーで買ってきたものを常温においておき、そのまま皮をむきます。

ジャガイモはご存知の通り芽や茎にソラニンという毒素があるので食べてしまわないように丁寧に取り除きます。放射線照射によって芽が出にくくなっているとはいえ、やっぱり何日もほったらかして置いておいたら出てきますね。厄介だ(ものぐさmorokitchの自業自得である)。フランス人は反射的にこれを拍子切りにしてしまうのですが、今回はジャーマンポテトに入れる時のように大きめのくし切りに。揚げるときに芋同士がくっつかないように水にさらしたのちペーパーで乾かしてあげます。

長芋は、藁のついたままピーラーを使って皮むき。正直者のように真っすぐ育ってくれているおかげで何とも剥きやすい。その後の包丁カットはどうもぬるぬる滑ってしまうので慎重に。苦手な方は酢水に浸けると滑りにくくなるのでオススメです。なお、敏腕料理人morokitchは気にせずガンガン切ります(めんどくさいだけ)。

一番面倒だったのは里芋。もじゃもじゃしていてピーラーの刃は立たないし、ぬるぬるのぬる!長芋と違って形もごろっとしているので手間がかかります。手と面の皮が厚い敏腕料理人morokitch(言いたいだけ)なら大丈夫でしたが、あまり長時間ぬるぬるに触っているとかゆくなったりすることがあります。これは、シュウ酸カルシウムという針状の小さな結晶が指に刺さってしまうために起こります。しかも、ぬるぬる(ムチンという多糖類に低分子のタンパク質が結合したもの)のせいで水で洗ってもなかなか落ちにくい…捕食者から身を守るすべを尽くしていますね。

さて、その一方でキャッサバ芋は…?どれどれ袋を見てみると

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「凍ったまま油で揚げてください」とあります。

ブラボー!!優勝に一歩近づきました!

ちなみに写真にある「マンジョッカ」とはブラジルやアルゼンチンでのキャッサバ芋の呼び名で「マオニク」ということも。また、ペルーのようなスペイン語圏だと「ユカ」と呼ばれたりします。名称のめんどくささは今回の評価には加えないこととしましょう。

 

揚げ編

順番に油にポーンしました。ジャガイモはすっと沈んでじゅわわわと心地よい音を立ててくれます。里芋は粘りっけのせいか少しパチパチと激しめ。続く長芋も同様です。最後にキャッサバ芋をポーンすると

バチバチバチバチ!!」

そりゃそうだ、氷の膜がついていたからな(泣)

緊急避難して10秒ほどすると大人しくなったので、丁寧に薄氷をはがしたもう一片を入れると

バチバチバチバチ!!」

なんでやねんを心の中で叫びつつ、台所に容赦なく飛び散る油をなすすべなく眺める羽目になりました(´;ω;`)

 

さて、ちょっと時間がたったところで様子を見てみると、かなり個体差が見られました。長芋と里芋の色づきが非常に速いのです(写真はのちに色の変化を見るために一斉にポーンして同じ時間揚げたもの)。

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焦がしてしまっては台無しなので、この二者だけは先に湯あがりすることに決定。さらにもうしばらくするとジャガイモもいい色に揚がりました。ところでキャッサバはというと、まだまだまっしろ。凍ってたからやむを得ないか。とさらに揚がるまで待つこと五分超。長すぎるやろお腹すいたわ(笑)

一度取り出して冷ました後、すっかり湯冷めしたジャガイモ・里芋・長芋と共に二度目の揚げフェーズに入ります。うん。いい感じに仕上がりました!

盛り付け編

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こうやって並べてみるだけでも違いが判って面白いですね。

水分量の多いジャガイモ・里芋は表面がぷっくり膨らんでかわいらしい。その一方で、キャッサバ芋は切り株の如くパリッとした佇まい。長芋はカリっと揚がっているもののつややかで水っぽい見た目をしています。四者四様の良さを備えています。

ただし、里芋と長芋の中まで火を通すのにはどうしても黒っぽくなるまで揚げる必要がありました。うーーーん、惜しい!

ではでは、実食といきましょう

 

結果発表(実食)

ジャガイモ

  1. 調理の簡単さ:★☆☆
  2. 見た目の美しさ:★★☆
  3. 美味しさ:★★★☆
  4. 絶妙なカリふわ:★★☆

「これぞ我らのスタンダード」ということで得点はこれを基準に浸けていくことにします。マクドナルドの細長いあいつもいいけど、贅沢に大きく切った方が食感が嬉しいですね。食指をくすぐるキツネ色もgood。分厚く切っても色味が調節できるって、当たり前ではない特性だったんだなぁなんていろいろ揚げてみて思いました。

結果は8点です!

 

里芋

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  • 調理の簡単さ:☆☆☆
  • 見た目の美しさ:★☆☆
  • 美味しさ:★★☆☆
  • ヘルシー健康:★☆☆

手間のかかる割には見た目が今一つ。黒っぽくて、ジャガイモフライドポテトの下位互換といった印象。やっぱり里芋は煮物がいい気がしました。カリふわを期待してかじってみると、なんと!カリッの後に特有のぬめりがまだ生きている!日本人が遺伝子レベルで好きなこの食感、醤油ベースのあんかけにして食べれば最高な気がする…!外側もしっかり膜を張っており、蒸し焼き効果が見られます。

ちなみに里芋さんは芋界の中で熱中症対策に有効なカリウムが最も豊富で、逆に炭水化物量は一番少ないんだとか。いや、せっかくヘルシーなのに揚げるなよという感じですね(笑)

結果は5点です!

 

長芋

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  • 調理の簡単さ:★☆☆
  • 見た目の美しさ:★☆☆
  • 美味しさ:★★★☆
  • 泡の食感:★★☆

こちらも見た目がイマイチ。では味はいかがか?

かじってみると「えっ?なんだこれ?」ジュワっという暑さと共に、繊維が壊れて溶け行くような新しい舌ざわり。例えていうなら、霜柱を靴で踏みつぶすような快感がありました。焼いても生でも、そして揚げても独特の食感を提示してくれる食材としてのポテンシャルの高さに脱帽しました。

結果は7点です!

 

キャッサバ芋

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  • 調理の簡単さ:★★☆
  • 見た目の美しさ:★★☆
  • 美味しさ:★★★☆
  • 冷めても美味しい:★★★

個人的には樹木を思わせる見た目が好き(笑) 非常に焦げにくくこんがりきつね色に揚げられる点もgoodです。

ほくほくを期待して口に入れると「フランスパン?!」少しかじっただけでパイを割ったかのようなこのザクザク感。予想に反したこの食感、たまらん…!特に強調すべきはその食味の保存性でしょう。一通り味見した後はどうしてもべちゃっとしてしまいますが、キャッサバ芋だけはいつまでたってもカリカリのまま美味しく食べられます!もしキャッサバ芋が日本のファミレスや居酒屋に浸透すれば「冷めちゃったから」という理由の食べ残しが激減するだろうなぁなんて思いました。

ちょっと欲を言うと、マヨネーズ・ケチャップ・マスタードあたりが欲しくなる味わいです。塩だけでも美味しいんだけどね。

結果は10点です!

 

総括

以上、フライドポテト王者決定戦の食レポでした。

キャッサバ芋がとりわけ美味しかった印象ですが、美味しさとカロリーは常に隣り合わせ。ジャガイモのでんぷんが12~16%程度なのに対してキャッサバ芋は20%もあります。いわゆる糖質が多いわけです。

 

参考:

キャッサバABC

ジャガイモのデンプン含量が調理特性に及ぼす影響-J-Stage

 

ちなみに色づくまで時間がかかったのもこれが原因。里芋や長芋はでんぷん量が少なかったために焦げやすかったのです。でんぷんの粒子の大きさなんかにも言及したいのですが、長くなるので今日はここまでにしましょう。

 

え?さつまいもを忘れてるって?

あれはあまりに美味しすぎるので殿堂入りということにしましょう…蜂蜜バター付けると美味しいよね(買い忘れただけです(m´・ω・`)m ゴメン)

 

なお、キャッサバ芋は五反田のペルー領事館横の「キョウダイマーケット」さんで購入できますが、基本的に通販では買えません!五反田まで足を運ぶか、ラテン系の料理屋さんに行きましょう。あるいはうちに来てもいいですよ(笑)

(今後輸入量が増えれば一般にも出回るかもしれないので一応ショップリンクも貼っておきます)

 

 

時短炊き込みご飯アロスコンチレ(arroz con chile)のレシピ

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アロス・コン〜シリーズ最終回は真っ赤な辛いペルー風ピラフ「アロスコンチレ」です!

チレ(Chile)は食材ではなく辛いという意味の形容(名)詞で、特に唐辛子による辛さに対して使われる言葉です。なのでアロスコンチレを直訳するなら「ご飯と辛味」といったところでしょうか。

 

ロスコンチレは、炒めた唐辛子ペーストを炊き込んだ辛〜いご飯と海老の旨味がベストマッチな料理。なんとなく四川風エビチリを彷彿とさせるような味わいです。

というのも、海老の旨味成分イノシン酸と唐辛子の旨味成分グルタミン酸が相乗効果を発揮して強い旨みを感じさせるからでしょう。

前回投稿した「アロスコンマリスコス(ターメリックで炊いたご飯と海鮮)」「アロスコンチャンチョ(コリアンダーで炊いたご飯と豚肉)」と合わせると炊き込みご飯シリーズ3品目になります。


つまりこの時点で、赤・緑・黄の三色のご飯と海鮮(貝、魚、イカ)・豚肉・海老の3種の組み合わせ(3×3=9種)ができるようになったわけです。

ロスコンポジョのような鶏肉を使った炊き込みご飯もありますが、アロスコンチャンチョと殆ど作り方が同じなので、実質3×4=12種のペルー料理が作れるようになったことになります。同様に、使える具材のレパートリーを増やしていけばいくらでも作れそうですね。

 

以前大阪のペルー料理店『ロスインカス』さんで食べた時はハバネロを使っていたのですが、今回はロコトペーストとアヒリモを使って辛味を弱めに作ってみました。

今回は冷やご飯を使って簡単に作れるようにアレンジしてあるので、思い立った時にパパッと作ることができます。

※ちょっと蛇足ですが、ペルー料理は家庭料理から派生しました。それ故に、出回っているレシピの至る所に時短技が散りばめられています。今回紹介する冷やご飯を使う炊き込みご飯の作り方は、回転率の高いレストランでもよく用いられる手法なので、胸を張って時短術を使っていきましょう!

 

ロスコンチレのレシピ

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材料3~4人分

冷やご飯:2合

鶏がらスープ:300mL

玉ねぎ:1/2個

ニンニク:1片

じゃがいも:2個

しめじ:1/3パック

ミックスベジタブル:50g

ロコトペースト:大さじ2

アヒパンカペースト:小さじ1

海老:16尾

アヒリモ:1個

 

レシピ

  1. フライパンに油を敷き、海老を入れて炒める。表面が焼き固まったら取り出す
  2. 同じフライパンでみじん切りにしたニンニクと玉ねぎ、ロコトペースト、アヒパンカペーストをよく炒める
  3. ※省略可:強火にしてピスコを加えてフランベする。
  4. 鶏がらスープを入れて鍋の旨味をこそげとり、さいの目切りにしたじゃがいもとしめじ、ミックスベジタブルを入れて煮込む
  5. 煮詰まって出汁が少なくなったらご飯を入れてよく混ぜて完成。お好みで横向きにスライスしたアヒリモを添えて完成

 

ペルーでは頻繁に辛い料理×じゃがいもの関係が見られます。じゃがいもの淡泊な味が唐辛子の辛さを緩和してくれる効果があるからです。今回もその作法に則ってレシピを考案しました。なお、遊び心でしめじも入れていますが、役割的にはじゃがいもと同じです。本場風にしたいならマッシュルームあたりが妥当でしょう。

また、フランベをすると炎の火力(1500℃前後)のおかげで素材の香りが引き立ちます。炎が上がるのが怖い、という人は生のロコトを直火で炙ってから使えばOK。その後に、工程2の段階で小さじ1のピスコ(なければ料理酒)と共に炒めればだいたい同じような風味になります。

 

ここまでで、生米から炊く・炊飯器で炊く・炊いたご飯を混ぜるという三通りの炊き込みご飯の作り方を紹介しました。それぞれでご飯の食感・味の染み込み具合が異なります。どれが正解などはないので、一番好きな方法をお試しください。

また、すべての記事に目を通してくださった方は、煮崩れを防ぐ(食材を途中で取り出す)・表面に焦げ目をつけてから煮る(リソレというフレンチの技法)・フランベをするなどといった工夫が散りばめられていることにも気づかれたことでしょう。

もちろん、めんどくさければどれもやらなくてOKです。なんなら今回の料理は

  1. 鍋にカット済みの全ての材料を入れてスープで煮る
  2. 煮詰まったところでご飯を入れて混ぜる

の2工程だけで完成します。

わざわざ炒めてみたり加熱時間を変えたりしているのはどれも「素材の個性」を生かすための工夫です。あまりに均一な料理は食べていて楽しくありません。例えば、焼き魚・きのこの炊き込みご飯・お味噌汁これらを全てミキサーで混ぜてしまえば、いとも簡単に「10秒メシ」ができてしまいます。こんなウィダみたいな料理よりは、食感が違うとか、味の濃さが違うとか、香りが違うとか…口に入れてみるワクワクが多いに越したことはありません。今回、アロスコンチレを作った方はきっと、海老をかじるときにワクワクしたはずです。そういう「料理の不均一性」が食を楽しませるための一番の工夫だったりします。

ちょっとお堅い話になってしまいました。まぁ、あんまりこじらせると「卵かけご飯をしっかり混ぜる派とざっくり混ぜる派でケンカが起こる」なんてことにもなりかねないので、好みやその日の気分に合わせてたのしくゆるりと料理を楽しんでください!笑

 

※ペルー料理に使う食材やその入手法はこちらから確認できます

morokitch.hatenablog.com

 

日本カレーの歴史とアヒデガジーナ(Aji de gallina):レシピ付き食文化講義3

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 こんばんは、morokitchです。今回は「アヒデガジーナ」のレシピを紹介しつつ、カレーから食文化を考えてみます。

 日本のカレーの歴史

皆さんは不意にカレーが食べたくなることはありませんか?初期欲を刺激するスパイシーな香りととろっとした深いコクのある味が、少し思い出すだけでほしくなってしまいますよね。日本のみならずイギリスやペルーでもそれぞれの土地に根付いたカレーが愛されており、老若男女問わず絶大な人気を誇っています。どうやらカレーには我々人類を魅了する魔力があるようです…。

 

ところで、日本にあるカレーはイギリスから流入したものです。本来のカレーはインドが発祥で、とろみは全くなく、シャバシャバとしたスープのような料理でした。16世紀にイギリスが東インド会社を設立したのをきっかけに次第にインドの食文化がイギリスに流入するようになったと考えられえており、18世紀後半になってやっとイギリスにカレーが伝わったそうです。

カレーのスパイシーな香りはイギリス人たちをすっかり虜にしてしまったようで、挙句の果てにはイギリス海軍の水兵たちも「船の上でカレーを食べたい」と言い始めたそう。しかし、船の上は波の揺れが大きく、このままではシャバシャバで熱々のカレーをこぼさないように気を付けながら食べなければなりません。これでは折角の食事の時間が落ち着けないということで、小麦粉によってとろみをつけてこぼれにくくしたといわれています。

日本に伝わったのはいわば「イギリス水軍式カレー」であり、それを日本の食材で作れるようにアレンジしたものが「日本のカレー」の始まりです。当時は肉食が解禁されていなかったので、肉の代わりに鯛や海老、カエル等の肉を『イギリスのカレー粉』で煮て、仕上げに小麦粉を加えることが明記されています。

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カレーはイギリスを経由してインドから日本まで伝わった

参考)明治5年に出版された『西洋料理指南』という本からレシピの抜粋(一部書き換えて読みやすくしています)

「カレー」の製法は葱一茎、生姜半個、蒜(にんにく)少しばかりを細末(みじん切り)にし、牛酪(バター)大さじ一を以て煎り、水一合五尺(270cc)を加え、鶏、海老、鯛、牡蠣、赤蛙等のものを入れてよく煮、後に、「カレーの粉」小さじ一を入れ煮る。西洋一字間(たぶん一時間したらということ)、已に熟したるとき(煮詰まってきたら)、塩を加え、また、小麦粉大さじ二を水に溶きて入れるべし

※さらに料理人目線から補足。スパイスは油で炒めて香りを引き立てて使うのが定石ですから、カレー粉を炒めずに直接湯に入れてしまうのはスパイスの何たるかがわかっていないことを示しています。ネイボッブと呼ばれるインドでお金を稼いで帰国したイギリス人(成金インドかぶれ)たちが、形式的にしかインド料理を模倣できていなかったことがうかがえます。

 

そういえば、じゃがいもが入っていませんよね。じゃがいもはペルー発祥で、ヨーロッパには16世紀後半、日本には1600年ごろに輸入されました。

ごつごつした見た目と淡泊な味が輸入先の食文化になじまなかったようで、ヨーロッパはでは「悪魔の根っこ」なんていうあだ名をつけられたそう。それもあってか、16世紀に持ち込まれたにもかかわらず、一般に浸透するまで2世紀ほども時間を要したといわれています(長くなるので詳述しませんが、じゃがいもは栄養価が高く栽培が容易であり、貧困層を救う食材となりえます。それに気づいた有識者によって西洋に広められ、偏見を克服したといわれています)。

日本でも、じゃがいもはなかなか料理に登場せず、カレーの具材に加わったのは、イギリス海軍のカレーレシピが伝わってから26年も後の明治31年頃でした。なお、明治36年には文明開化によって肉やカレー粉も大衆向けに販売されるようになりました。そのころになってようやく「現代の日本のカレー」が確立されたようです。

アヒデガジーナのレシピ

さてさて、一方で、ペルーのカレーはどうでしょうか?

歴史的側面に目を向ける前に、アヒデガジーナの作り方を見てみましょう。

 

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材料4皿分

鶏むね肉:1枚

玉ねぎ :1/2個

食パン:1.5枚

牛乳:500mL

アヒアマリージョペースト:大さじ2

アヒパンカペースト:小さじ1

ターメリック:小さじ1

パルメザンチーズ:大さじ1

ご飯:2合

ふかしたじゃがいも:2個分

 

 

レシピ 

  1. 鍋に水を800mLと鶏むね肉を入れて、煮汁が半分以下になるまで茹でる
  2. 鶏肉を取り出し、手で細かく裂く(包丁でそぎ切りにした後に叩いても良い)
  3. フライパンにオリーブオイルを敷き、みじん切りにした玉ねぎとアヒアマリージョペースト、アヒパンカペースト、ターメリックを炒める
  4. フライパンの中身をミキサーに移し、食パンと牛乳を加えて混ぜる
  5. 鍋にミキサーの中身と鶏むね肉を移してパルメザンチーズを加えて温め、塩で味を調える
  6. 皿にご飯を盛り、ふかし芋を並べた上にアヒデガジーナを盛り付けて完成

 

今回の写真には、トッピングとしてウズラの茹で卵、オリーブ、アヒアマリージョを使っており、アヒアマリージョは直火で炙ることで香り高く仕立てています。ピリッとすまろやかな口当たりで、日本人の口にも合う味わいです。ピーカンナッツを加えることもあるのですが、手に入らない場合はクルミカシューナッツでもよいでしょう。

美味しく作るコツは何といっても鶏肉から上手に出汁を取ること。中途半端に茹でたくらいではおいしくできないので、20~30分くらい時間をかけてむね肉をじっくり煮込みましょう。家庭によってはセロリを入れて出汁を取るところもあるようです。

 

 ペルーのカレーの歴史

 レシピにあるように、アヒデガジーナは出汁やスパイスも使いこなしており、もちろん現地の唐辛子も効果的に組み合わせています。そして、特筆すべきは小麦粉よりも付加価値の高いパンを使ってとろみをつけていることでしょう。当時の「生活水準」が西洋よりも低かったペルーで、どうして「カレー水準」が西洋よりも高いという逆転現象が起きているのでしょうか?ペルーの主食はじゃがいもと米だったはずですが、パンはどこから来たのでしょうか?

その答えが、第一章で言及した16世紀のヨーロッパへのじゃがいもが流入にあります。1532年、スペインのコンキスタドール(征服者)であるピサロという人物がペルーで栄華を極めていたインカ帝国を陥落させて植民地化に成功しました。金銀や香辛料の獲得が目的であった彼らは、ペルーの多種多様な植物を自国へ持ち帰り、その中にじゃがいもも入っていたのです。

パンがペルーに浸透したのもこれと時期を一にします。というのも、征服後にはスペイン人がペルーに居座ることになります。彼らの主食はパンですから、やはりペルーにいてもパンが食べたくなるものです。そこで、現地のペルー人たちにかまどを作らせて、創意工夫を凝らしたパンを焼かせ、食べていたのです。今となってはペルーではいつでも焼き立ての美味しいパンが食べられていますが、あくまで主食はジャガイモや米。アヒデガジーナが作られ始めた当時は、わざわざカレーにとろみをつけるために小麦を製粉しようとは思わなかったでしょう。小麦粉はパンの前駆体でしかなく、とろみをつけるのに最も適した食材が、時間がたって固くなったパンだったのだろうと想像がつきます。

つまり、ペルーは唐辛子やじゃがいも等の食材をスペイン経由で西洋に送り、逆に、そこからパン作りの文化を受け取ったという形になります。

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インカ帝国の征服によりペルーとスペインで食文化の交換が起きた

 

この交換が完了した時点で、ペルー・スペイン、少し遅れて日本に同じ食材がそろったことになりますから「ご飯にかけて食べられる一番おいしいルゥ」を求めて試行錯誤した時に全く同じカレーにたどり着いても何ら不思議ではありませんよね。それでも、ペルーと日本ではこんなにもカレーの様式が異なっているのですから、食文化の差とは強力なものです(今やイギリスと日本ですらカレーの様式に差があります)。

 

まとめ

日本は、西洋からカレー粉と肉を、ペルーからジャガイモを仕入れることで現在のカレーを獲得しました。一方で、ペルーは西洋からパンを仕入れて現地の肉や香辛料と合わせてアヒデガジーナを作りました。

「ご飯にかけて食べるルゥ」というコンセプトはほぼ同じなのに、我々の目からみるとアヒデガジーナは特殊な料理に見えてしまいます。同じ食材が手に入った時点から今にかけてで日本カレーとペルーカレーがここまで異なる料理に成長したのは、間違いなくその時点までに築き上げられてきた食文化観の差といえるでしょう。

 

ここからどのような発想が得られるでしょうか。

例えば、閉鎖的な環境で料理修行してきたフランス人・中国人・日本人のシェフを一人ずつ招いて文章だけで書かれたカレーのレシピを渡せば、似通ってはいれども三者三様の料理が出来上がることが予想されます。これは、それぞれの食文化観(いわば伝統)が異なっているから生じる差であり、カレーの異なる進化の様相を微分した結果に等しいでしょう。

つまり、よく「どこそこのフレンチがよかった」とか「最近食べた中華料理が」などと話をすることがあります。全部とは言えませんが、その料理屋で使われている食材は日本で手に入るものばかりです。つまり、私たちが「フレンチ」や「中華」として認識しているものは、用いる食材の差ではなく、結局のところ、料理の際の「料理人のちょっとした意識や認識(=美味しいの判断基準)の差」でしかないのかもしれません。

 

こう考えると、逆のことも言えそうです。

例えば、あなたはアヒデガジーナのレシピや味を知ってしまったので、今あるカレーをもっと美味しくする工夫をできるようになりました。これは、あなたの食文化観が「生粋の日本人」のそれから遠く離れていっていることを意味します。また、あなたが生まれてからマクドナルドのバーガーや餃子の王将天津飯、或いは、コンビニの中華まんを「美味しい」と感じた瞬間にも、あなたの食文化観はじりじりと太平洋や日本海の外側に向かってシフトしているのです。

さらに、あなたの「美味しいの判断基準」が変わるのは小さな変化かもしれませんが、同様にたくさんの日本人が外国料理を美味しいと感じかねない環境で生きています。今この瞬間にもたくさんの日本人の子供がマクドナルドのハンバーガーの美味しさに感動しているのです。

「この刺身醤油、ごま油を入れたら美味しくなるかも」なんていう発想を少しでもしたことがありますか?日本の食文化観(=美味しいの判断基準)は、どこかに「和」を秘めていながらも、すっかりグローバル化しているかもしれません。

あれ?となると、あと何百年もすれば世界中の食文化観が収束して新しい料理が生まれなくなってしまうんでしょうか?いったいその時に作られる料理はどんなものなのでしょうか?

 

それともそんなことは起こりえないのでしょうか?では食文化観の収束を妨げてくれるのは何なのでしょうか?国家間の貧富の差でしょうか…?

 

 

※読んでいただきありがとうございました。記事中で紹介したアヒデガジーナの調理に使うペルー食材についてはこちらの記事をご参照ください

morokitch.hatenablog.com

 

ぽってりかわいいペルー料理『ロコト・レジェーノ(Rocoto relleno)』

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こんにちは、morokitchです!今日は、ロコトを使った料理を紹介します。

 

ずんぐりむっくりした見た目が可愛らしいですが、その正体は泣く子も辛くて泣けなくなるほどの激辛唐辛子。

どれくらい辛いかという議論ではよく「スコヴィル値」という数値が使われます。

ピーマンは0、タバスコは1200~1800、鷹の爪は4~5万、もっというと、市場で最強の催涙スプレーが18万くらいです。どうですか?イメージできましたか?

 

それに対してロコトのスコヴィル値はなんと5~30万!

 

うーん、なんか数値やばいし辛そう!笑

 

まず、5~30万って幅広すぎますよね。これは、測定の精度が低すぎるのではなく、場所や熟成度によって辛さが変わるのです。

普通の唐辛子は、緑から黄色を経て赤まで熟し、次第に辛さを増していくことが知られているのですが、それに対してロコトは黄色い時期が一番辛いとのこと。また、同じ個体を見てみても、部位によって辛さが違います。最も辛味が弱いのは外皮で、次に辛いのが種を支える白いワタの部分。そして最も辛いのが種です。

 

しかもその種が特徴的。写真を見てみましょう。

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真っ赤で肉厚な果皮に潜む禍々しくも黒い種…。

唐辛子の種子はたいてい白か茶色で、黒いのは非常に珍しいそう。これを始めに食べてみようと思った人はきっとアンデス山脈の勇者だったのでしょう…。

それで火を噴いてなお食べるために試行錯誤したのですから、我々の先祖の食への執着には畏敬すら感じます。

 

では、そんなアンデスの勇者と伝道者たちが遺してくれた、かわいいロコトの攻略法を紹介します。

 

ロコトの下処理

そのままではとても食べられないので、辛さを抜きます。

  1. ロコトのヘタ部分を取り、ナイフを入れてワタを切り落として種を取り出す
  2. スプーンでワタがついていた部分をしごき落とす
  3. 鍋に1Lの水、砂糖を大さじ2、ロコトを加え火にかける
  4. 3~10分茹で、冷水にさらす

どうもペルーでは砂糖を加えるのが一般的なのですが、それが辛味に及ぼす影響は科学的に謎(はっきり言うと関係ない)。山本紀夫先生の著書『トウガラシの世界史』にもロコトの辛味抜きに関して言及がありましたが、そこでも「意味があるのか…?」という趣旨を述べていました。

なので、合理的に料理したい方は砂糖は入れなくてOKです。

湯で時間が3~10分としたのは好みの辛さに調節するためです。長時間茹でるほど辛味とピーマンっぽい青臭さが弱くなります。それでも辛いという方は10分茹でた後にお湯を捨て、再び水から茹でてやりましょう。

逆に「もっと辛いのがいい!」という方は、生でもOK。辛い物大好き大国ペルーでは、セビーチェに入れたりする人もいるそうですよ。

※しょうもない補足:ゆで汁味見してみたらものすごい辛くて笑いました

 

ではつづいてレシピの紹介です

 

ロコトレジェーノ(Rocoto relleno)のレシピ

 材料2個分f:id:morokitch:20191020064903j:image

ロコト:2個

ジャガイモ:2個

モッツァレラチーズ:1個

牛肉:50g

玉ねぎ:1/4

ニンニク:1片

醤油:小さじ2

酒:大さじ1

パンカペッパーペースト:大さじ2

茹で卵:1個

生卵:1個

牛乳:100mL

オリーブオイル:大さじ1

 

レシピ

  1. ロコトをヘタごと下処理し、一緒に卵とジャガイモを茹でておく
  2. フライパンに油(分量外)を敷き、細かく刻んだ牛肉を炒め、次いで、みじん切りにした玉ねぎとニンニク、パンカペッパーペーストもよく炒める
  3. 酒を入れて鍋肌の旨味をこそげ、仕上げに醤油と刻んだ茹で卵を入れて混ぜる
  4. ロコトに具を詰め、モッツァレラチーズをのせ、ヘタでふたをする
  5. ジャガイモスライスとモッツァレラチーズを交互に重ねてつまようじで固定する
  6. 卵と牛乳とオリーブオイルを混ぜて塩を一つまみ加えて混ぜる
  7. 4と5を耐熱皿に入れ、上から6をたっぷりかけて余熱なし200℃のオーブンで20分焼く

 

辛味を茹でこぼしてもやっぱり辛いものは辛いので、ジャガイモやチーズ、牛乳のようなまろやかな食材と掛け合わせるのが一般的です。ジャガイモベースのドゥフィノワーズ・グラタンを添えることが多いのですが、このレシピでは簡単のためそれにジャガイモタワーを作りました(味の構成はグラタンと同じです)。

また、チーズはモッツァレラチーズを用いましたが、南米風フレッシュチーズやカッテージチーズでもOK。オーブンがない場合は(全て火入れは済んでいるので)トースターを使っても構いません。

 

焦げ目をつけてかっこよくしたい場合はバーナーで炙るかオーブンに入れる時間を長くしてください(モッツァレラチーズ溶けによってヘタが落ちやすいので注意)

 

冒険心をくすぐるロコトレジェーノ。ぜひお試しください!

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 今日はこのブログにインスタ連携機能があることを知って、早速使ってみました。

こんな調子で料理投稿してるのでよかったら見に来てください~~